泣き虫×酔っ払い×ホントはね?

強がり×思いつき×希望の光

の奈々実バージョン。

 

 

 

「う…気持ち悪いかも…。」

起きると同時に胃に違和感を感じてトイレへと向かった。



「はぁ~。飲み過ぎた…。」

仕事帰りに同僚と飲みに行って、さらに家に帰ってきてからもまだ飲んだ。

おかげで昼過ぎに目は覚めるは起きたら気持ち悪いわ、頭痛いわ…。

最悪の状態だった。

冷蔵庫から水を取り出し喉に流し込むと、テーブルの上の携帯は着信があった事を知らせるブルーのライトが点滅していた。


『奈々美今日休みやんな~??
昼過ぎに行くから起きててな♪』

友人からの突撃予告が入っていた。

『了解♪』

と短い返事を返し玄関の鍵を開けて、私はソファーに横になった。

しばらく目を閉じ二度寝に入った矢先。


ピ~ンポ~ン♪♪


軽快な音と共に玄関のドアが開いて元気な声が聞こえた。

「菜々美、おはよ~。」


「おはよ~。」


「あれ?何かあんた元気ない??」


中学からの同級生で幼馴染と言うやつ。

性格は私が羨ましくなるくらい可愛い。と言うか素直である。

女の私が言うのもなんだが、彼女にしたい連れNo.1

「うん。二日酔い…。」

「あほ…しかも起きたとこ??」

「うん。」

グレーのスウェット姿にスッピン・ぼさぼさ頭。

見るからに今起きましたと言う格好に半分呆れながらキッチンで勝手にコーヒーを入れ始めた。

「私のも入れてぇ~。」

情けない声でそう言うと彼女は『分かってますよ』と手をあげて合図をしてくれた。

 

コトッっと置かれたマグカップ。

「あんた最近何病んでるわけ?」

カップを置くと同時に有無を言わせぬトーンで訪ねてくる彼女をジトッっと横目で見ると余裕の表情。

勝てる気がしなくて正直に話してみた。


「彼氏が…遠距離になってしまいました。」

「遠距離!?ってあんた彼氏いたん?そっちのがびっくりやわ。」

「すまん。言うの忘れてた。」

「遠距離って国内?海外?」

「ん~…海外?」

「何でそこでハテナがつくかわ置いといて、会いに行けば??」

「いけないんだなこれが。」

「じゃー違う男探せば?」

「嫌だ…。」

「我儘な奴。」

「ごもっともで…」

テンポよく交わされる会話に流される様に本音が漏れていく。

「どんな人?男前?」

「うん。男前。」

「性格は?」

「優しいよ。ちょっとたまに子供やけど。」

「する事した?」

「途中まで。」

「歳上?年下?」

「年下。」

「珍しぃ~。」

「そう??」

「そ~でもないか。」

あまりのテンポの良い会話に思わずホイホイと答えて答えるとまずい事まで応えそうになっていた。

「とりあえずシャワー入ってくるは。」

私はボロが出る前にお風呂場へと向かった。


**********

 

 

「ちょっとはまっしになったか?」

「あんまり…。」

シャワーを浴びて着替えを済ませてリビングに戻るとホットサンドが出来あがっていた。

「とりあえずこれ食べて外行こう!」

「外??」

「そう。こう言う時はパーっと買い物してパーっと飲もう!!」

彼女の元気な声とハイテンションにつられる様に私は笑顔を返すとテーブルの上のホットサンドを頬張って出かける準備をした。


家を出て数時間、服にカバン、日用品、食糧。

たっぷりの買い物を済ませて荷物と車を家に置きに帰ると、今度は徒歩で出かけた。

いつもの駅前のショットバー。


「こんばんわ。」

マスターに挨拶して見せに入ると私達は自称指定席であるカウンターの一角に座った。

「私モスコミュール。菜々実は?」

「私はアスティ・スプマンテ。ボトルで。」

「天使?モランド?」

「ん~…今日はモランド。
あとつまみ適当によろしく。」


「あんた好きやなシャンパン。」

マスターが持って来てくれたシャンパンを飲んでいると、呆れながらも笑っている彼女。

「うん。思い出もいっぱいあるから。」

「彼氏との??」

「彼氏とのシャンパンの思い出は淋しい思い出になってるけどね。」

苦笑いを浮かべながらおつまみの生ハムに手を伸ばす。

「今日は全部吐いちゃえ!!」

バシッ!!

背中を叩きながら小悪魔な笑みを浮かべる彼女に少し感謝しながら私は本音を漏らして言った。

ホントは遠距離になった時点で諦めなければいけなかったのに、それが出来ずに苦しんでいる事。

『色んな事情があって話せない事もたくさんあってごめん。』

と言いながら言葉を選んで話して言った。


「何か羨ましいな。」

ポツリと彼女がこぼした言葉の意味が分からずに思わず彼女を凝視してしまう。

「いやさ~、何かお互い大事に思ってるんやなぁ~と思って。」

優しく微笑む顔につられて私も笑顔になった。

「うん。大事やぁ~。
でもきっと諦めて解放してあげる方が相手の為なんやと思う。」

「そうか??私は今のあんたと同じように相手も思ってくれてると思うな。」

「そう??」

「うん。本間は次の男探さすつもりやったけど、こんな話聞いたら無理や!!
何が何でも会って一緒にいなさい!」

その言葉で今まで我慢していた私の感情は雪崩の様に崩れていった。

「泣け!!」

そう言って渡されたお絞りを受け取ると、私は我慢する事を辞めて『会いたい…』と呟きながら涙をむぐった。


「遠距離か…本当にお互い思ってるなら会えない時間こそ愛がはぐくまれるんだよな~なんて。」

「マスターくさ過ぎ!!
そんなそんな事言ってるからいつまでも彼女できんのよ。」

黙って聞いていたマスターの一言に彼女は爆笑していた。


ひとしきり飲んで、泣いて、スッキリした私の様子を見ながら彼女は真剣な声でポツリと話してくれた。

「独り言やと思って聞いて。
あんたがいいひん間すっごい心配した。
でも、大事な仲間や本気で好きになれた人達といたなら、よかったと思ってる。
もし、もう一度会える事になったら迷わず行き。
私は淋しいけど、それでもあんたの話してる時の笑顔みたら引き留める気なくなった。
だから、私達の心配はいいから、迷わず行き。
ただ、行った事がわかる様にだけしといてくれたらそれでいいから。」

そう言って笑った彼女の顔を私はこの先忘れないだろと思った。



~おまけ~

「なんだよ急に?」

キルアに背中から抱きしめられながらベッドでシャンパンを飲んでいると、懐かしい顔を思い出していた。

「ううん。ちょっと思い出し笑い。」

「なんかムカつく。」

「なんで??」

拗ねたように腕に力をこめて首筋に顔を埋めるキルア。

「なんか今めちゃくちゃ綺麗だって思った。
俺以外の事考えてるのにそんな顔するんだ?」

「キルアの事じゃないってなんでわかったん??」

「だって俺そんな顔見たこと無いから。」

拗ね続けて首筋・肩とキスを落としていく。

「キルアと離れ離れになってる間に友達と飲みに行った時の事思い出してたん。」

「どんなだったんだ??」

私は彼女との事を話すと手に持っていたグラスを奪われてサイドテーブルに置くと、そのまま押し倒された。

「キルア??」

「その子に感謝だな。
今こーやっていられるにはその子のおかげじゃん。」

キルアはそう言って私に優しいキスを落としていく。

「奈々実、愛してる。」

「私も愛…」

言い終える前にキルアの優しいキスで口を塞がれてしまった。

 

~Fin~