一次試験×スケボー×甘い罠?

 

 

ジリリリリリ~!!


ベルの音と共に一次試験の試験官のサトツさんが天井から降りてきた。


「私、一次試験の試験官を勤めさせて頂く、サトツと申します。皆さんを二次試験会場へとご案内いたします。ルールは至ってシンプル、私の後をついてきて下さい。」

 

 

 

「おっ!やっと始まんのか。
俺待ちくたびれちゃった。」

 

 

 

「確かに結構待ったなぁ。
でもスケボーの練習もできたし、ゴン達にも会えたし♪」

 

 

 

「あれ?何か楽しそうじゃん。
会場入るまではあんなに嫌がってたくせに。」

 

 

 

キルアの言葉に『ホンマや』と言いながら慣れって恐ろしいなと思いながらも2人で目を合わせて笑った。


 

 

 

「菜々実も大丈夫そうだし、俺はゴンと先に行くぜ?

なんかあったら呼んでよね。
ちゃんとスケボー乗ってこなきゃばてるぜ?(笑)」

 

 

 

「じゃーみんなあとでね~。」

 

 


キルアとゴンは手を振りながらどんどん進んで行く。


 

 

「えっ!?ちょっと!まじですか・・・。ってもういないし・・・。」

 

 

 

私は大きなため息を吐きながら諦めた様に走りはじめた。

スピードが遅い間はスケボーに乗るのをやめて自力で走りっていた。


 

 

走り初めて約1時間。

 

 

 

やばいそろそろばてそうかも・・・。」


 

 

空手の現役時代は2・3時間走りっぱなしなんて平気だったのに、思った以上に息が上がってきた。

 

 

 

「折角借りたんだ、利用できるものは最大限に活用した方がいいんじゃないか?」

 

 

一緒に走っていたクラピカの一言に背を押されて私はキルアから借りたスケボーに足をかけた。

 

 

「何か自分だけ悪いから2人共荷物貸して。せめて持たせて(笑)」


 

「嫌、しかしそれは悪い。」

 

 

 

クラピカの言葉に自己満みたいなもん。
と返すと2人は頼むと言って荷物を預けてくれた。



「ところでキルアとはいつから一緒に行動してるんだ?」


 

レオリオの質問にこの際だから全てを話した。





「そんなことが本当にあるのか・・・。」


 

 

「なんてこったぁ。じゃー奈々実は試験内容も俺達の受験動機も知ってるってことかよ?」


 

 

私の話に驚いた様子の2人に苦笑いをしながらも信じてくれている事に安心した。

 

へたをすれば単なる変な奴なわけで・・・。

 

 

 

「そーなる。年齢も。
・・・ってレオリオほんとに10代!?」


「おまっ!それは失礼だろ~」


「だって私が20代やから・・・。年下とはなかなか思えへん・・。」




「「「「はぁ~!?20代!?」」」」


試験開始から2時間半。
いつの間にか様子を見にペースを落として走っていたキルアとゴン。

 

そして一緒に走っていたレオリオとクラピカ、全員の動きが一瞬止まる。




「なによ~。悪い!?私も10代のままが良かったよ。」


あまりの反応に少し口を尖らせたまま私は走り出した。


「いや、20代には見えないなと・・・。」


「それ子供って言いたいの?」


「違う!けしてそういう意味じゃなくてだな。」


クラピカが焦った顔をしながら弁解しようとしているのを見て思わず笑いが込みあげた。


 

「へー良いじゃん若く見えるんだし。」


「そりゃそーやけど。」


「おっさんが10代って方が問題だろ。」


「それって私におばさんって言ってる???」


「うわ!なんか菜々実の後ろに黒い影が!!
そんなこといってねぇじゃん!
菜々実その影しまえってば!」


 

キルアはレオリオの体に隠れながら必死で謝っている。


なんだかその姿が可愛くて怒っているのも忘れて思わず笑ってしまった。




「可愛いから許す(笑)」


「可愛いって言われても嬉しくねぇよ。」


キルアの赤い顔をしながら少し俯く姿が、まだまだ子供らしさが胸をくすぐる。

 

 

 

ゴールの明るい日差しが視界に入ると同時にゴンとキルアはスピードを上げ、あっという間にかなり先を元気に走っている。


レオリオが途中限界に近かったが、漫画さながらに上半身裸で何とか頑張ってくれたおかげでなんとか無事ゴール出来そうだ。




問題はここから。
 

 

霧に紛れてヒソカや何人かの受験者達に狙われない様にと、私はキルアの側に向かった。



「お疲れ!とりあえずこの先はスケボーじゃ無理だろ?
持ってやるよ。」


先に地上へと到着していたゴンとキルアが迎えてくれる。


「ありがとう。ここからちょっとやばそうやから、キルアの側にいとく。連れってって。」


私はそう言いながらキルアにスケボーを返した。


「いいぜ。誘ったからにはちゃんと守ってやるって。」



キルアのセリフに一瞬キュンとしてしまった私は、それを誤魔化す様にキルアの頭をガシガシ撫でた。

 

 

 

「いっちょ前なセリフを(笑)」



「ちょっと!何すんだよ!」



私は笑いながらポケットから出した煙草に火をつけると近くに腰掛けた。

 

 

 

 

「菜々実ってさ、何かよくわかんねぇよな?」

 

 

 

キルアは私がぐちゃぐちゃにした髪を直しながらしゃがんで煙草を吸っていた私の前で唐突に話し出す。

 

 

 

「わからんとは???」

 

 

 

「明るいんだけど何かマイナス思考だったり。
怒るとなんか背中に黒い影みえるし。大人なんだか子供なんだかよくわかんねぇ。
俺普段は結構パッと見で判断出来ちゃうんだけど。」


 

 

少し困った表情をしながら見下ろしている。

 

 

 

「あ~みんなに言われる。
けど隠してるだけで実際は単なる淋しがり屋の甘えた。

 けど何か癖で姉御タイプを貫こうとしてしまうかも。」

 


「へぇ~それすげぇギャップあるじゃん。何かモテそうだよな。」

 

 

 

思わぬセリフに驚きの声を上げてしまった。

 

 

「はぁ~~~!???」



「声でかいってば。」

 

 

キルアが焦って私の口を手で塞ぐ。

 

 

「ご、ごめん・・・。」

 

 

私は苦笑いを浮かべつつ、そのままの状態で謝る。

 

 

「モテん・・・。姉御が前に出て素直に甘えたりできんから(笑)」

 

 

 

「じゃ~菜々実が甘えられる相手って結構すごいんだ。」

 

 

 

「そーかもってなんでこんな話!?恥ずかしいんですけど・・・。」

 

 

思わず赤くなってしまう顔を隠す様に慌てて頬に手を当てる。

そんな私を面白そうに見ながらキルアは何故かそっと手を出してきた。


「ほらっ約束。ちゃんと二次試験会場まで連れってってやるから、姉御面してないで甘えろよ。」

 

 

 

少し照れながら差し出された手は想像していたよりも少し大きく頼もしいものだった。

 


私は少しためらいながらもその手に自分の手を添えた。

 

 

そっぽを向きながらしっかりと私の手を握り返したキルアは12歳よりも少し大人びて見えてしまった。

 

 

 

 

★☆★☆★


 

 

 

 

ヌメーレ湿原に入った私たちは2グループに別れてしまった。

 

 

ゴン、キルア、私は試験官であるサトツさんの後方をキープできたが、クラピカとレオリオが少し後ろに下がってしまっている。

 

 

 

あたり一面の霧に離す事も忘れて、さっきキルアに差し出された手は今もしっかりと繋がれたまま。



「何か想像してたのとちょっと違うかも・・・。」

 

 

「何が???」

 

 

 

自然とこぼれた言葉をキルアは聞き逃さなかった様だった。

 

 

 

「キルアとゴンの身長。私よりキルア高いんだなこれが。」

 

 

 

「菜々実がちっこいんじゃないの?」

 

 

「ちっこいって言うな。」

 

 

 

「キルア俺より少し高いよね。」

 

 

 

「親父や兄貴が高いからな。」

 

 

 

「うん。確かにシルバさんたかいよなぁ。」

 

 

 

「そんな事まで知ってんの??」

 

 

 

あっさり出てくる名前にキルアは驚き一瞬目を見開いていた。

 

 

「うん。知ってる。

シルバさんに会いたいし、イル兄にも会いたいし、ミルキ痩せさせたいなぁ~。


 

 

「お前殺されるぜ?」

 

 

 

「シルバさんにならいいいかも・・・。」

 

 

「まじ!?親父好きなの!?」

 

 

「だってめちゃくちゃ渋くて男前・・・。」

 

 

キルアはふ~んと言った後、何故か真顔で前を向いてしまった。



 

 

 

 

しばらく無言で走っていると、突然ゴンが足を止めて後ろを振り返った。


 

 

「おいゴン。どーしたんだ?」



「今レオリオの声がしたきがして。」

 

 

 

「はぁ?聞こえた?」

 

 

 

キルアは私に聞いてきが私は黙って首を横に振った。

 

 

 

「ちょっと見てくる。先に行ってて。」

 

 

 

「ちょっと待てよ。おい!ゴン!?」

 

 

 

キルアの言葉に止まることなくゴンは後ろへと走って行った。

 

 

 

「しゃーねぇな。はぐれても困るし行くか。」

 

 

 

「うん。ゴン達なら大丈夫。」

 

 

「何か菜々実が言うと説得力ある気がするし、これでたどり着けなかったらこの先の試験なんて受からねぇか。」

 

 

 

 

そう言って私たちは後ろを少し気にしながら走り続けた。



私はキルアのおかげで何とか二次試験会場まで何事もなくたどり着けそうだ。

 

 

 

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