やっぱりと言うべきか、さすがと言うべきか、無事キルアと私は、特に大きな事故もなく二次試験会場へとやってきた。
チラホラと合格者達が到着して行く。
そんな中、少し経って遠くにレオリオを担いでいるヒソカを見つけた。
あっイル兄と何か話してる
「菜々実?」
キルアが『何か気になんの?』と言いながら私が見ていた方向を見る。
慌てて振り向いた瞬間、キルアの髪が鼻先をくすぐった。
手をつないだままのおかげで思っていたよりも距離が近い。
さらにキルアが私をのぞき込む様に視線をたどったおかげで
さらに距離が縮まってしまった。
「キルア・・・。
そろそろ手離しても大丈夫なんじゃないかと・・・。」
いつもより小声になってしまい、視線の先を探していたキルアが私の方へと視線を戻して一瞬固まる。
「・・・。
そっそうだよな。もう平気だよな。」
耳まで赤くなったキルアはさっと手を離した。
キルアがこっちを向いた瞬間お互いの頬が一瞬触れ合ってしまったのだ。
一瞬の出来事だったにも関わらず
10歳も年下の男の子にどーも振り回されてしまう。
落ち着け私の心臓!!相手は子供!子供なんだ!
内心なぜかドギマギしてしまいながらも、表面的には平然を装いつつ
「ゴン達遅いな。もー来てもおかしくないのに・・・。」
「ホントに大丈夫なのかよ。
・・・。
おっ!あれゴンとクラピカじゃねーか!?」
姿を見つけたキルアはゴン達のもとへと駆け寄る。
「お疲れ様。間に合ってよかった。これで全員一次試験合格。」
私はクラピカにそう言って微笑んだ。
★☆★☆★
二次試験。
メンチとブハラ。豚の料理か丸焼きか・・・。どっちだ!
目の前にメンチとブハラが現れた。
二次試験の内容は
『ビスカ森林公園内に生息している豚を使った料理』
「きた~~~グレイトスタンプ♪」
私は思わず小声で叫んでガッツポーズをしてしまった。
「キルア!ゴン!クラピカ!レオリオ!ちょっとこっち来て。」
私はみんなを呼び集めた。
そのままグレイトスタンプを見つけると
「声出さないでね。他の人のヒントになるから。」
小声で言ってそのまま近寄って額を思いっきり蹴りつける。
急所を蹴られて涙を流しながらひっくり返る。
「こーゆー事♪」
私の言葉をスタートにみんな獲物へと向って行く。
更に私はみんなが捕獲している間にメモ帳にわかりやすく各自にレシピを渡す。
「使うか使わないかは任せる。
じゃーみんな頑張って。」
私は自分の調理台でスペアリブを作り始めた。
すりおろした野菜にヨーグルト、醤油、みりん、はちみつ、酢、酒、数種類のスパイスなどの調味料を合せて豚の肋骨の部分の肉を骨付きでさっきのタレに漬け込む。
その間に付け合わせのパンプキンサラダと人参のグラッセを作り、肉をオーブンで焼く。
時間があるので生姜焼もおまけ(笑)
「出来た~。」
私はそう言ってメンチとブハラの元へ走って行った。
ブハラの前には既に20頭分ほどの丸焼きの骨が積まれてある。
メンチは私が持っているお皿が視界に入るなり立ち上がる。
「私が待ってたのはこう言うのよ。」
そう言って口へ運んだ。
「ん~。しっかり火が通って、周りは香ばしくて、中はじわっと肉汁が溢れだす。
程よいスパイスに後からほんのりはちみつの優しい甘さが肉の甘さを引き立てる。」
メンチはフォークを置くと立ち上がり私に抱きついてきた。
「合格!!!!
あんた一体何者なの!?
これじゃー他の受験者がかわいそうになっちゃうわね。
よし。お題変更!豚の丸焼きでいいわよ。」
メンチは機嫌を良くしてちゃんとした丸焼きなら合格を言い渡していた。
ド~~ン!!!
終了の合図がなる。「合格者70名。これから後半試験を行う。
お題は握り寿司。
始め!!!
やばい。この展開はやばい。
絶対私以外の合格者が出ない。何とかしなくては
私は慌てて握り寿司を作る材料を川に獲りに行った。
思ったよりも使える魚が多く、数種類の握りずしを握ってメンチの元へと向かった。
さっきの印象が良かったのか、メンチは機嫌良く合格を言い渡してくれた。
機嫌のいいメンチに私はそっとお願をする。
「生意気かもしれませんが、お題お寿司より、もう少し捕獲に難易度があって、調理方法がシンプルで食材の味が比較しやすい方が美食ハンターさん達の凄さが理解しやすいのに・・・。」
私は必要以上にガッカリした態度でメンチの横でお腹がすいたであろうみんなの為にちらし寿司と稲荷寿司を作っていた。
みんなは尽くメンチに皿を投げられていく。
握り寿司は今教えて握れるようになんてならない。
私でさえも一人前に握れるようになるまで3年かかった。
メンチは突然立ち上がると携帯を取り出した。
「会長申し訳ありませんが私達をまふたつ山まで運んでいただけませんか?」
『かまわんぞ20分程でそっちにつくから待っておれ。』
メンチは電話を切るなり後半試験の内容変更を通達した。
私は待ち時間を利用して前半試験の合格者にちらし寿司と稲荷寿司を配った。
もちろん受け取らない人もいた。
私はこのチャンスを待っていた。
さぁ。ヒソカとイル兄にご挨拶を・・・うふふふふ。
私は2人分のセットをもって近づいた。
「あの、ヒソカさんギタラクルさんもよかったらどうぞ。」
「君なんだかちょっと変わてるね。」
ヒソカは皿を受け取るなり唐突に言った。
「はい???」
「あれ?自覚無いの☆?」
「何のですか?」
「カタカタカタカ(念使える?)」
イル兄しゃべった!!!!
「習得したいけど、まだです・・・。」
「じゃ~君自然に纏やってるのかい?」
「纏やってるどころか精孔すら開いてないかと・・・。」
「ふーん。ねぇ見たことある?」
「カタカタカタカタカタ(初めてみた。)」
ヒソカとイル兄はなんだか珍しい物を見る目で私を見てくる。
まぁ警戒心たっぷりよりまっしか。
「あの私どこか変ですか?」
「変じゃないよ。ちょっと珍しいだけ。念覚えたいの?」
「はい。試験に合格したらですが。」
「念覚えたら手合わせしたいな。なんだか楽しくなりそうだね。これは頂いておくよ。試験頑張ってね。応援してるよ。」
ヒソカはそう言って去っていく。
珍しい??私が??纏出来てる??は??意味がわからん・・・。
私は訳がわからないまましばらくヒソカの背中を見つめていた。
「悪いが、おかわりあるか?」
半蔵は声をかけてきて私は我に戻った。
「あるよ。ちょっと待ってって。」
調理台に戻っておかわりを用意していると何人かが列を作った。
「うまいよ。ありがとう。」
「ご馳走様。」
何人かが声をかけてくれる。
気付くと隣でキルアが何か言いたそうに私を見ていた。
「どーしたん??」
「菜々実食った?」
「いんや。それが食ってない。」
実はみんなに配ったりなんかしてたおかげで自分の口にはまだ一口も入っていない。
「はい。」
キルアが稲荷寿司を1個差し出してくれる。
私は両手がふさがっていたからそのまま半分キルアの手にある稲荷寿司にかぶりついた。
「我ながらうまい!」
「かじんのかよ(笑)まだ食う?」
「食うより煙草吸いたい(笑)」
キルアは笑いなが代わってくれた。
ありがとうと言い残して少し離れた所で煙草に火をつける。
「良い物食べさせてもらったわ。ありがとう。君名前は?」
「菜々実です。試験内容かえてくれてありがとうございました。メンチさん。」
メンチが話しかけてきた。
「確かにあのままじゃ合格者1人になっちゃう所だったわ。
少し頭に血が上っちゃった。」
「まふたつ山楽しみです。」
「菜々実は免除で良いわよ。
あなたは後半試験に受かってるし。」
メンチはウインクして去って行った。
「ブハラ、あの子変わってるわね。私初めて見たわ。」
「俺も初めてみた。会長見たことあるのかな?」
ブハラとメンチの会話が私の耳に届く事はなかった。
束の間の立食パーティーの様な風景は飛行船の音で終了を告げた。