どうしよう。
心臓が、壊れそうなくらいドキドキする……。
「寒い?」
ううん、と首を振る。
震えているのは、室温とは別の理由。
イルミの手のひらが、肩の線をなぞるように降りていく。
絹のガウンが背中から滑り落ち、この身体を隠すものはもう、なにもない。
服や下着の中を探られたことは、今までにもあったけれど。
こんな風に、彼の前に肌をさらすのは初めてのことだ。
「……怖い?」
裸になった私の上に、イルミは影のように覆いかぶさってくる。
外気で冷やされた髪が、サラサラとすべってくすぐったい。
「……ううん、大丈夫。でも、やっぱり恥ずかしい……かな」
「そっか。じゃ、俺も脱ごうかな」
「えっ!」
「二人とも裸だったら、恥ずかしくないだろ?」
そ、そうかなあ……?
イルミの裸……昨日の夜も見たけれど、あんなもの見たら余計に緊張してしまいそうな気がする――でも、そんな風に考えているうちにも、イルミはガウンの紐を解き、パサリ、と濃紺の絹衣を床の上に脱ぎ捨てた。
「海月……」
「イ、イルミ……わああっ!? ま、まま待って、待って!!」
そのまま、ぎゅうっと抱きついてきそうになるのを、すんでのところで食い止める。
パチパチ、と暗闇の中でイルミの目が瞬く気配がした。
「え、やっぱりダメ?」
「だだだだってだって!!」
イルミの素肌が熱い。
それに、ありえないくらいにすべすべしていて、なめらかで――
「――っ、ダメじゃ、ないけど……ご、ごめん、心臓、バクバクしすぎて目眩が……!」
「俺もだよ」
「え……っ?」
ほら、と抱き寄せられ、裸の胸に私の頬が押し当てられる。
「あ……」
本当だ。
イルミの心臓、今にも飛び出してしまいそうなくらいに、高なってる。
「暗殺者としては失格だけど。海月といるときは、俺は暗殺者じゃなくて、俺だから、いいよね?」
「……うん!」
大きな背中に腕をまわして、私から彼に抱きつくと、イルミの目が柔らかく細められたのが分かった。
いつも、光なんて届かないような場所で仕事をしているから、いつの間にか夜目が効くようになってしまった。
イルミもきっとそうだ。見えていることは分かっているし、こちらも見えるから、余計に恥ずかしさを感じるんだけど……青い闇の中に佇むイルミは、息を飲むほどに綺麗だ。
「イルミ……」
大好き、とつぶやけば、深い口づけが返ってきた。
お互いに気のすむまで求め、唇を離した後も、じゃれるように下唇を食んだり、舐めたりしてくる。
伝えたことはないけれど、こうしてるときのイルミは猫っぽくて、なんだか可愛い。
「――っあ……」
唇から、耳朶を通って、首筋へ。
ひとつ、ひとつ、ゆっくりと愛おしむように、イルミは私の身体にキスの雨を降らせていく。
つうっと鎖骨を舌でなぞられ、背中を甘い痺れが駆け抜けた。
「――ひゃ……っ」
「可愛い……」