「俺の依頼人って……」
「うん。ボ・ク」
「帰ろうかな」
妙だと思った。
普通、殺しの依頼というものは人目を避けた場所で行われるものだ。
依頼人が面会を希望する場合は、特に。
日曜の午後。
都内の公園にあるオープンカフェで待ち合わせ、なんてことはあり得ない。
「悪いけど、話は日を改めて聴くよ。じゃあね、ヒソカ」
「待てよ久しぶりに顔を会わせたのにそれはないんじゃない?」
「俺、今すごく忙しいんだ。本当なら、家を離れたくなかったのに」
「そんなにポーのことが心配?」
「……」
どこかから情報が漏れている。
この男の張りつけたような笑顔から直感した。
「ゴンがねポーのことが心配だな
って言ったら、教えてくれたんだ。花嫁修業のことも……色々ね」
「……余計な真似を」
「そう言うなよボクだってあれからずっと、ポーとキミのことは気になってたんだ。友達がいのないキミは、ろくに教えてくれないし……」
「友達?」
「……」
「ねえ、ヒソカ」
「なんだい、イルミ」
「この前、ゴンがキルの友達になるためにゾルディック家に来たよね。そのとき、ヒソカもこっそり忍び込んで、どさくさに紛れて親父とゼノじいちゃん相手に戦っていっただろ」
「うんあれは楽しかったな久しぶりに120点越えと戦えて、いつもよりハッスルしちゃったけど……それがどうかした?」
「そのとき、自分は俺の友達だって言ってたよね。ヒソカは俺の友達なの?ビジネスパートナーじゃないの?」
「さぁね正直どっちでもいいと思ってるけど、イルミこそボクと友達になりたいの?」
「さあ……?」
問われて、首をかしげる。
おかしいな。
「……あれ?おかしいな。なんで俺、こんなこと聞いたんだろ」
「いいよ」
「え?」
「要するに、イルミはポーを助けたいんだろ?万が一、彼女が花嫁修業に失敗して、命が危険にさらされたとき……そのときは、ボクも手を貸そう」
こっくり、俺は頷いた。
ここまで読まれていたとは。
きっと、依頼人との顔合わせなんてものは口実で、ヒソカは今日、このことを話すために俺を呼び出したのだろう。
恐ろしい勘、そして、考察力だ。
「ひとつ、貸しだね」
「いらないよ」
「……?」
「友達は貸しなんてつくらないもんだろ?」
「そうなんだ?便利だねー」
「クックックッ!!でも、せっかくだからここの支払いはお願いしちゃおうかな?ストロベリーパフェもう一個頼んでいい?」
ニヤニヤ笑いの赤毛の男に、たっぷり10秒考えて結論を出した。
「ダメ」