13 ヒソカとハッスル水見式!

 

 

 

 

 

 

というわけで……。

 

 

 

「二次試験合格、おめでと~っ!!」

 

 

 

「「「「かんぱーい!!!!」」」」

 

 

 

「カタカタカタ……(かんぱーい)」

 

 

 

「かんぱい☆トモ。寿司は全員一発合格だったね。今回はほんと、トモのお手柄だったよ☆☆☆」

 

 

 

「そ、そんなことないですよ!大体、ヒソカさんとギタラクルさんが豚料理を助けてくれたから、次に進めたようなものですし……」

 

 

 

ところかわって飛行船の中。

 

 

 

二次試験で出された二番目の課題、寿司をクリアーしたメンバーは飛行船に乗り込み、三次試験会場であるトリックタワーに向かっている最中だ。

 

 

 

夕食にはなんとなんと、あのメンチさんが直々に腕を振るった料理の数々が!!

 

 

 

(なんでも、試験中に美食ハンター魂を刺激され、火がついちゃったらしい)

 

 

 

豪華だ……。

 

 

 

試験中なのに、ちょっとした立食パーティーみたいなことになってます。

 

 

 

美食ハンター魂に感謝!!

 

 

 

さてさて、お腹一杯になったところで、私たち――ヒソカさん、ギタラクルさん、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオの7名は、わたしの見せた変な力……念能力について話をするため、飛行船内の人気のない場所に集まった。

 

 


展望スペース、と言ったらいいんだろうか。

 

 

三日月型の広場は、壁がガラス張りになっていて、下をのぞくと丁度、飛行船の船尾と、静かに回転しているプロペラが見えた。

 

 


船底すれすれを波のように雲が滑り、空の底には街の夜景が煌めいている。

 

 

 

私たちは、窓際のソファに腰かけた。

 

 


そして、テーブルの上には……ちょこん、とあぐらをかいたちびヒソカさんの姿が。

 

 


「はあ~……可愛いなあ……」

 

 


せっせ、せっせ、と小さな小さなトランプを、積み上げては崩して笑い、積み上げては崩して笑い……。

 

 


大きい方がやると不気味でも、ちんまりしたヒソカさんがやると悶絶可愛らしいから不思議だ。

 

 


「やっべ。なんか俺、ヒソカのくせにこいつのことメチャクチャ可愛く思えてきた……!!」

 

 


「オレも~!」

 

 


「くそっ!くやしいが……ヒソカごときに俺もだっ!!」

 

 

 

「あああ!私も、不本意ながらヒソカなどに鼻血が……!!」

 

 


「カタカタカタカタ……(そう?俺は死んでも可愛いとは思わないけど)」

 

 


「……トモとゴン以外は全員失礼だなあ★殺しちゃうよ?」

 

 


「ま、まあまあ、ヒソカさん!みんなそれぞれちゃんと癒されてるんですから……」

 

 


すっかりほだされた私たちは、ほや~んとした眼差しで、その仕草を見つめていたのだけれど。

 

 


いやいや、ダメダメ。

 

 

 

本来の目的に戻るよ!

 

 


「それで、このヒソカはトモの『ねんのーりょく』なんだよね?でも、それってなに?みんなは聞いたことある?」

 

 


くりん、と首をかしげるゴンに、クラキルレオリオはひょっこりと肩をすくめた。

 

 

 

「いや……悪いが、私は知らないな」

 

 

 

「俺もだ。まーだ自分の見てるもんが信じられないくらいだからな」

 

 


「俺もよくわかんねー。でもさ、つまりは、そのなんちゃらって力を使って、トモがこのヒソカを産み出した……ってことだよな?」

 

 


「そのとおり☆念とは、生命エネルギーであるオーラを自在にあやつる力のことを言うんだけどねぇ。使うものの個性によって、能力は様々なんだ☆ほんとなら、ボクやギタラクルのように、並外れた身体能力や精神力を備えた人間じゃないと、念能力者にはなれないんだけど……」

 

 


チラッと視線を寄越したヒソカさんは、有無を言わさずわたしを膝の上に抱き上げ、盛大にほおずりした。

 

 


ぎゃああああああ恥ずかしい&お肌スベスベエエエエ―――!!

 

 


「でも……!!トモは見たところ普通の女の子だろう?なのに、描いたものを具現化し、しかもその能力や、味や臭いといった細部の特徴まで忠実に再現してしまうだなんて……!!んあああああ!!いいよ!トモ!!キミ、スゴくいいよ!!もう、もう、ボクは興奮が止まらな――」

 

 


ブスッ!!

 

 


「カタカタカタカタ……(気持ち悪いから、ちょっとケイラクヒコウでも刺しておこうかな)」

 

 


ひいいっ!!

 

 


イルミ兄さん、情けもへったくれもなくぶっすりイッたあああっ!!

 

 


「ヒ、ヒソカさん!ヒソカさんっ!?だ、大丈夫ですか!!?」

 

 


「……だ、大丈夫……っ、だよ★」

 

 

ギタラクル、あとで覚えておくんだねぇぇ~~っ、と、息も絶え絶えにヒソカさん。

 

 

ほ、ほんとに大丈夫なんだろうか。

 

 

「カタカタカタカタ……(さて。茶番はこれくらいにして、本題に入ろうか)」

 

 

コトッ。

 

 


テーブルの上に、ガラスのグラス。

 

 


水を注いで、葉っぱを浮かべて――

 

 

んああああっ!!
 

 

 

知ってる!!

 
 

 

知ってるぞこれ、確か、ゴンとキルアが念を覚えるときに、ウィングさんにやらされてた、えーと、えーと……

 

 

「みじゅみしゅき………!!」

 

 

ガッチ!!

 

 

「カタカタカタ……(水見式。今、思いっきり舌噛んだ気がしたけど、大丈夫?)」

 

 


「……大丈夫れす。そ、それって、たしか、自分の念能力の種類が調べられるんですよね?」

 

 


「カタカタカタカタ……(うん。よく知ってるねー。コップの水に向かって、オーラを増幅させる練を行うと、なんらかの反応が現れる。それによって、トモのオーラがもつ性質が分かるんだ。まあ、変態のヒソカと馬の合う変わり者だから、間違いなく特質系だろうけど)」

 

 


「さりげなくバカにされた!!」

 

 


「カタカタカタ……(気のせいだよ?)」

 

 

 

「なんかそれ楽しそうだよなー!」

 

 

 

「うんうん!!いいなあ、トモ。ねぇ、ヒソカ。オレや他の皆は、『ねんのーりょくしゃ』にはなれないの?」

 

 

 

「ううん☆そうだなぁ……念も使えないのに、君たちにはこの小さなボクが見えている。ボクの見立てとしては、君たち四人にはかなり素質があるんだよねぇ~☆☆☆だ・か・ら・他のやつらと違って、あっさり殺さなかったんだよ☆」

 

 

 

「そうなの!?」

 

 

 

「それって、そういう基準だったのかよ!

 

 

 

「うん☆でも、君たちはこの力を知るにはまだ早い。本当はトモも早いんだろうけど、使えるようになっちゃったものは仕方ないからね☆ボクに出来ることは、早熟で可愛い青い果実が壊されてしまわないように、じい~~~っくり見守って、手取り足取りナニとり育ててあげ--」

 

 

 

ブスッ!!

 

 

 

「~~~★!!!!」

 

 

 

「頭にエノキがーーーっっ!!大丈夫ですかっヒソカさんっ!!?」

 

 

 

「カタカタカタカタカタ……(あー、気持ち悪い。大丈夫。ヒソカは殺しても死なないよ。それより、トモ。厄介な奴らに嗅ぎつけられる前に、ちゃっちゃと水見式やっちゃいなよ)」

 

 

 

「え?あ、は、はい」

 

 

 

厄介な奴らって……まあ、いいか。そんなことより、水見式だ!

 

 

 

 

うえっへっへ。

 

 

 

実はコレ、一回やってみたかったんだよね~、楽しみ!!




「じゃあ、練しまーす!!」




えーと、まずはオーラを身体に留める纏。




纏をしたまま、一気にその量を増やす。




やり方は簡単。

 

 

 

身体の底から沸き上がる、この想いを開放するだけだ!!!




うおおおおおおおおおお!!!!




ヒソカさんの湯上りスッピン前髪下ろしたバージョンが見たあああああああああああああああああああああいっっ!!!!!




「うわああああああああっ!!!!」




「な、なんだってんだぁこの力は!!?」




「分からない!だが、目には見えないが、トモの身体から何かが溢れ出している!!」




「こ……この感じ……知ってる。なんか、わかんねーけどすっげぇヤバイ感じ……そうか、兄貴と一緒なんだ。きっと、兄貴もトモと同じ念能力者なんだ……!!」




「カタカタカタカタ……(……。それにしても、強力だね。トモはオーラの増幅力に優れてるんだねー)」




「クックックッ☆ああ、素晴らしいよ、トモ……!さあ、練はそのくらいで充分だよ。グラスの水を見てみよう☆」




「はあ、はあ……、は、はい」




ぶはああああっ!




つ、疲れた……ええっと、グラス、グラスっと。




あれ?




「なんだか、見た感じ何にも変わってない気がするんですけど……」




「ふーん。見た目の変化がないなら、味が変わっているのかもね。もしもそうなら、トモはボクと同じでオーラの性質を変化させる変化系の念能力者ってことになるけど……でも、トモは嘘つきでも気まぐれでもないよね★」




「ねぇ、ヒソカ!嘘つきで気まぐれだと、どうして変化系なの?」




くりっくりの目で見上げてくるゴンに、ヒソカさんはニヤーリと、とっても嬉しそうな笑みを浮かべた。




「根拠はないんだけどねぇ。ボクの作ったオーラ別性格判断さ。ちなみにゴン☆キミの第一印象は、単純で一途。もしキミが念能力に目覚めたら、オーラで物のもつ働きや身体能力を向上させる、強化系の能力者である可能性が高い☆」




「強化系!!へぇ~、なんか強そうだね!!」




「ちなみに、オーラが強化系の場合、水見式では水の量が増えるんだよ☆」




「へぇ~!便利だね!!」




かっわええわあ~~!!!




「ふーん。なら俺は、どっちかと言えば変化系かな。他には何があるんだっけ?」




「カタカタカタカタカタカタ……(残りは、オーラで物体を生み出す具現化系。物や人を操る操作系。オーラを弾丸や人形に変えて放つ放出系。そして、他のどの系統にも属さない特質系の4つだよ。キルア君)」




キルア君て……イル兄。




いや、いいや。




深く突っ込むと後が怖そうだからスルーしとこっ!!




「で、でも、それだったら、わたしの能力は具現化系じゃないんですか?オーラでペンタブや、ちびヒソカさんを作ってるわけですから」




「具現化系の性格って?」




「神経質☆」

 

 

 

「違う」




「違う!」




「違うな!!」




「うん!絶対違うよ!どっちかと言うとクラピカっぽい!!」




「わ、わかってるよ!!みんなして傷つく言い方しないでっ!!」




「カタカタカタカタカタカタ……(それに、もしも具現化系なら、水の中に不純物が現れるはずだけど。なんにもないからねー)」




言いながら、ギタラクルさんはグラスを手にとり、テーブルランプの明かりにかざした。




「残る操作系は、理屈屋マイペース。水見式を行うと葉が動く☆放出系は短気でおおざっぱ。水の色が変化する☆いずれの系統も、トモの性格とはなんとなーく違っている気がするケド、だからと言って、それ以外の反応も見られなかったからなぁ……どう?ギタラクル」




「カタカタカタカタカタカタカタ……(うーん。分からない。葉は動かなかったし、色も無色透明。やっぱり、味が変わってるんじゃないの?)」




と、グラスを口に近づけ、クッ、と傾けるギタラクル。




でも、水は微動だにしなかった。




「うえええええええっ!!?」




「なにこれ!?なんだこれ!!?」




「ありえない!液体である水が、そのままの形で固まっているだとう!?」




「なんっじゃこりゃあ!!?まるでゼリーみたいだぜ!!!」




「カタカタカタカタ……(決定的。やっぱり特質系だったね)」




「クックックッ☆個人主義でカリスマ性有り。ボクの憧れの君と同じ系統かあ……ああ、やっぱり、トモはいいねぇ☆☆☆」




「はははは恥ずかしいですからっ!!そんなにすりすりしないで下さいよーう!!!」

 

 

 

わちゃわちゃわちゃ~っと、どことなく和気あいあいとした雰囲気が、でも、次の一瞬でビキリと凍りついた。

 

 

 

だってだって!!

 

 

 

さっきまでいなかった人が、急に現れたんだもん!!!

 

 

 

白いヒラヒラ、和服を着たヒゲの長い最強お爺さんキャラと言えばーー

 

 

 

 

 

 

「賑やかじゃのう。ワシも混ぜてくれんか?」