6 ヒソカとひとやすみ中間地点!!

 

 

 

 

 

「はい、ゴール☆」



トントンっと、最後の階段を駆け上りて、ヒソカさんはやっと私を下ろしてくれた。



着いた先は、やっぱりと言うべきか、ヌメール湿原のど真ん前。



うう……しくしく。



これからまだここを走るのか。



あんなコトやこんなコトをされながら。



……だいたい、この歳でお姫様だっこなんて……最初の方でゴールしたとはいえ、他の受験生の皆さんの視線が、ビシバシ刺さって痛いんだぜ……!!



「はあ、はあ……走ってないのに、やたら疲れた……!!」



「だらしないなあ。アレくらいで音を上げないでおくれよ☆」



誰のせいだああああ―――!!



キスはするわ腰は触るわ耳にそっと低音ボイスを囁くわ、セクハラというセクハラは一通り受けた気がするのは気のせいですかーー!!?



おかげで、数時間にもおよぶマラソンは回避できたけど、汗びっしょりだし!



ああもう、思い出しただけで変な汗!!



「酷い……っ!旧アニの高橋ヒソキさんは自他共に認めるヘンタイだったけど、新盤の浪川ヒソカさんは、大人の雰囲気漂うイケメン最強キャラだと思ってたのに……!!」



「……なんだか、ブツブツ呟いてるみたいだけど。トモ、そんな顔しないでおくれよ★ボクは、トモがちゃんとハンター試験に来てくれて、こうして再会出来て、嬉しいだけなんだよ?」



にーっこり。



……ちゃんと、目まで笑ってるけど。



いやいやいやいや、騙されるな私!



こんなのは気まぐれ以外のなにものでもないやん……!



大切なものがある日突然ゴミへと変わる、変化系の代表選手ヒソカーー!!



信じるな私!



ほだされるな私ーー!!



しかも、相手は二次元キャラクターだってことをゆめゆめ忘れるんじゃねええええええっ!!



「トモ、纏★」



「あ」



「全く……次は指摘しないでキスするからね?」



「うええっ!?」



目を白黒させたとき、さっきから遠くの方でなにやらーーここはまだ中間地点ですよー。これから二次試験会場まで走っていきますよー。詐欺師の塒ってよばれてますよー。人間を騙して食い物にしている生き物がいっぱいすんでますから気をつけてくださいねー。騙されると死にますよー、的なことをーー話していた、我らが試験官サトツさんが、こちらに鋭い視線を向けた。



な、なになに?



私ですか?と指差した途端、背後で怒鳴り声。



「そいつは偽物だ!俺が本物の試験官だーーー!!!」



えっ?



ぐるっと振り向いてみると、うわあ、なんだか緊迫した雰囲気。



サルの死体をつっこんだ袋を片手に、男の人が怒鳴っている。



「これを見ろ!こいつは、この沼地に生息するサルだ!手足は細く、自分では獲物を捕らえる力はない。だから、こうやって人間に化けて、餌を沼に誘き寄せ、殺して食べるんだ!騙されるなお前ら!!」



ざわざわ、ざわめく受験生たち。



当の試験官、サトツさんは平然としたものだ。



「嘘だあ。サトツさんはサトツさんだもん。あんな素敵なジェントルマンなサルがいたら、私が飼う!」



「プッ!☆」



あはははは!と、ヒソカさんが長身を折り曲げて笑う。



「そ、そんなに笑わなくても……」



「ゴメンゴメン☆やっぱり、トモは面白いな。一緒にいると、本当に退屈しないね」



クスクス。



余韻を含ませたまま、ヒソカさんはすっと背筋を伸ばすと、左手を腰に、右手で一枚のトランプを構えた。



おお?



「じゃ、トモの解答の答え合わせといこうか☆」



「わっ!?」



シュパッ!



一枚に見えたトランプは、放たれた途端、無数に分かれた。



半分はサトツさんがキャッチ。



もう半分はーーあああ、気の毒に。



顔や頭にトランプをザクザク刺したまま、偽物だなんだと叫んでいた男の人はバッタリとたおれた。



変装が解け、もとのサルに戻った死体に、ハゲタカが群がる。



うーん、弱肉強食。



「なるほど、なるほど……☆こっちが本物だね。ハンター試験の試験官は、協会に依頼されたプロのハンターが無償で行うものだからね。ボクらが目指しているハンターが、こんな攻撃ひとつ防げない訳がない。トモ、大正解☆☆☆」



「誉められてもイマイチ嬉しくないと言うか……ってか、ヒソカさん!去年も試験官半殺しにして失格になってるんでしょ?いくら、偽物かどうかを確かめるためとはいえ、試験官に武器を投げちゃダメですよ!また失格になっちゃいますよ!?」



「武器じゃないよ。これはただのト・ラ・ン・プ☆」



「ヒソカさんが持ったらなんでも武器になるんですっ!!」



コホンッ、と咳払い。



サトツさんが、もの言いたげな視線をこちらに向けている。



どうぞ。



「……そのお嬢さんの言う通り、試験官への暴力行為は即失格に当たります。しかし、今回だけは大目に見ましょう。二度目はないですよ?」



「あ、ありがとうございますっ!」



「クックックッ!トモがお礼言ってくれるんだ☆これじゃあ、どっちが保護者かわからないね」



「そう思うならヤンチャしないで下さいようっ!」



ぴいぴい泣く私に、ヒソカさんは一団と楽しそうに笑って、その場にしゃがんで、はい、と両手を差し出した。



「?」



「?じゃないよ。試験再開。みんなはもう走り出してるだろ?ボクらも追おう。先頭集団を見失ったら大変だ☆」



「……この手は」



「ん~~っ☆言わなくたって分かってるクセに☆☆☆」



ですよねー。



わああんっ!!!