キルア×風邪×菜々実ちゃん? 後編

「ん・・・。」

 

 

 

カーテンから差し込む日差しが眩しくて目が覚めた。

 

 

 

結局ゴトーさんに軽めの食事を頼んでもう一度薬を飲んだキルア。

 

 

私はベッドの上でキルアに膝枕をしたまま眠ってしまったらしい。

 

 

座ったまま寝たせいで背中が少し痛い・・・。

 

 

 

自分の膝に視線を向けると気持ちよさそうにキルアが眠っていた。

 

額に汗もなく。

 

乗っかってる頭も昨日の様な熱さはなかった。

 

 

 

そっと額に手をやると、すっかり下がっている様子。

 

 

「よかった。」

 

 

ほっとして思わずもれた声にキルアは目を覚ました。

 

 

「菜々実?おはよ。」

 

 

っまだ眠そうにもぞもぞと動いている。

 

 

「まだ寝てていいよ。」

 

 

キルアの髪を撫でながら優しく言うと子供の様にその手を掴んで私を見上げた。

 

 

「菜々実も一緒にねよ?」

 

 

普段年齢よりも大人に見えるキルアが昨日からはずっと甘えん坊で、それが可愛くて。

 

母性本能をくすぐられながら『たまにはいいかも』なんて思いながら私はそっと膝から頭を浮かすキルアのに従ってベッドに潜り込んだ。

 

 

するとまた、私の胸に顔を埋めもぞもぞと動いた後、落ち着く場所を見つけたのか小さな寝息を立て始めた。

 

 

 

私も熟睡できていなかった所為か布団とシーツ、キルアの体温に睡魔が襲ってきてそのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

「おはよ、菜々実。」

 

 

浅い眠りの中、キルアの優しい声が頭上から降ってくる。

 

あれ?私キルアを抱きしめていたはずがいつの間にかキルアに抱きしめられていた。

 

 

「おはよ・・・。」

 

 

まだ半分回らない頭で考え事をしながら返事を返し、声のする方を見上げるとすっきりとした顔のキルアが優しく微笑んでいた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

言葉と同時に瞼にキスをされた。

 

 

「もう大丈夫なん??」

 

 

「うん。復活。」

 

 

にっこりと笑うキルアの顔に安心して私はもう一度キルアの胸に顔を埋めた。

 

 

「菜々実にうつってないと良いけど。」

 

 

優しく髪を撫でながら少し心配そうな声。

 

 

「大丈夫。うつったらうつったやもん。」

 

 

クスクス笑いながらキルアの腰に手を回した。

 

 

「汗いっぱいかいたから風呂入りたい。」

 

「うん。一緒にはいろうか。」

 

 

私はガバっと身体を起こすと着替えの用意をしにウォークインクローゼットに向かった。

 

 

2人分の着替えを手にバスルームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「菜々実しんどいとかない??」

 

 

お風呂から上がってソファーに腰を下ろすと心配そうに私の顔を覗き込むキルア。

 

 

「そんな非医学的な・・・。

基本風邪の潜伏期間は1週間~2週間です。」

 

 

そう言って笑うと驚いた顔をしている。

 

 

「え!?よくドラマとかで風邪の看病した次の日とかに相手が風邪ひいてるのは!?」

 

 

「風邪の発症が1週間以上前からでてて、その間一緒にいたか、全く別かのどっちか。

インフルエンザじゃないんやから・・・。」

 

 

 

「じゃ~風邪はうつすと早く治るって言うのは!?」

 

 

「あれはだいたい皆発症から1週間ぐらいで風邪が治って、代わりに初期の段階で感染してた人が1週間の潜伏期間を経て発症してるだけの話。」

 

 

あっさりと話す私の横でなぜかがっくりと肩を落とすキルア。

 

 

「なんでキルアが落ち込んでんの??」

 

 

「俺ずっと信じてたから・・・。」

 

 

「ま~一般的にはみんな信じてるんじゃない??

医療従事者からしたら笑い話やけどな。」

 

 

「何で菜々実は知ってたんだよ??」

 

 

「うちの両親医療従事者やから。」

 

 

「菜々実の両親?」

 

 

キルアがそう言った直後、何とも言えない空気が流れた。

 

 

当たり前の様に上がった話題だったけど、良く考えればキルアに自分の両親の話なんてした事がなかった。

 

なかったのか、あえてしなかったのか。

 

それは自分でも分からない。

 

 

 

「菜々実、親に会いたい?」

 

 

手を組み床を見つめたキルアの質問に一瞬ためらいながらも私は素直に答えた。

 

 

「会いたいよ。会ってちゃんと『私は幸せやから心配せんといて』って言いたい」

 

 

そう言って笑ってキルアを見ると想像していた通り、驚いた顔をしていた。

 

 

ここ数日キルアの色んな顔を見れて役得だな。

 

なんて考えながらキルアに頭に手を伸ばし、優しくその頭を撫でた。

 

 

 

 

「だから私が風邪ひいてもキルアがそばで看病してな。」

 

 

「当たり前だろ!?

汗かいた身体しっかり拭いてやるって!」

 

 

「いや・・・やっぱりなんか・・・遠慮したほうがいいかも・・・」

 

 

出来る限り風邪はひかない方向で頑張ろう・・・なんて私は思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

 

 

 

「ね?菜々実風邪ひいてない??」

 

「ひいてないけど?ってか至って元気ですが??」

 

「おっかし~な・・・。」

 

「なにが?」

 

「俺が風邪ひいてもう2週間以上経ってるんだけど?」

 

「なら私にはうつってないんじゃない?ほら、私体力あるから。」

 

「ふ~ん・・・ま~元気ならいいんだけど。」

 

 

 

まさかあの後1週間ちょっとでまんまと風邪をひいた私はすぐに違和感に気付いた時点でしっかり風邪薬を飲み、隠れて病院に行って点滴をしたなんて口が裂けても話さない。

 

 

だってあの人風邪で寝込んだら何されるかわかったもんじゃないんやもん!!

 

 

ここから数年。

 

菜々実がキルアにばれる事なく風邪と格闘したとかしなかったとか・・・(笑)

 

 

 

 

~Fin~