「おいおい。部屋まで豪華だな。」
「鳴鈴実~!?」
蔵馬の呼びかけに答えない私を探して部屋へと入ってきたみんな。
「静かにしろ。」
ソファーの方から飛影の声がしてみんなが振り向くと、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っている鳴鈴実の姿を見つけていた。
「癒術師の正装ですか…。久しぶりに見る気がします。」
「正装?」
「桑原君達の制服と同じですよ。」
「それにしても、昔は幼い鳴鈴実が着ていたので気にならなかったけど、良いんですか?このまま寝かせておいて?結構肌蹴てますけど…。」
そう言って蔵馬は飛影の様子を伺うと、露わになった胸元、太ももまで捲れ上がった裾。
その光景に怒りを通りこして完全に見入っていた飛影は慌てて鳴鈴実を抱えるとベットルームへと運んで行った。
「なんでわざわざちっこい飛影にあんな事?運ぶなら俺が運んでやるのに。」
鳴鈴実が眠っていた場所に幽助を寝かしながら不思議そうに首をかしげてベッドルームと蔵馬を見比べていた。
「いいんですよ。そのうちわかりますから。」
そう言って蔵馬はソファーに腰掛けた。
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「ん…。」
賑やかな声が少し遠くでする気がして私は目が覚めた。
「あれ??確かソファーで寝てしまった気が…??」
私はベッドから降りるとドアを開けた。
「お!!やっと起きたか。」
「おはようございます。」
「zzzzzz…。」
ソファーに座って浦飯チームのみんなが集まっていた。
「来てたなら起してくれればよかったのに~。」
「あんまり気持ち良さそうに寝てたから飛影が運んでくれたんですよ。」
そう言って蔵馬は飛影がいるであろう方を指差す。
私は蔵馬に笑顔を向けた後、飛影のそばにむかった。
一人窓際のイスに座っていた。
「飛影、ありがとう。」
飛影は振り向いて私の手を引いた。
丁度桑原くんや玄海さんから死角になっている場所。
「きゃっ!」
びっくりして声をあげると飛影に耳元で静かにしろと言われてしまった。
私はあっという間に飛影の膝の上に向い合わせで座る形になっていた。
「あ、あの…。」
「なんだ?」
思わぬ行動に私は真っ赤になりながら広がってしまっている裾を気にして、どうしてこんな事になっているのか飛影に聞こうとしても、目の前にはいたずらを思いついた様な顔の飛影…。
「降ろし…んっ。」
なんとか絞りだした言葉は、あっけなく飛影に口を塞がれて届かなかった。
「ん…はぁ…ぁ。」
だんだん深くなっていくキスに私は飛影に必死でしがみ付くのが精一杯だった。
そっと離された唇を飛影が愛おしそうに指でなぞると、そのまま胸元が開いているのをいい事にまた一つ左の胸元に赤い花を咲かせた。
「大会が終わるまで、誰にも触れさすな。」
飛影はそう言うともう一度、今度は優しくキスする。
そしてそっと私を床に降ろしてくれた。
私は飛影の頬にキスすると蔵馬達のいるソファーへと戻った。
「鳴鈴実ハーブティー飲みますか?
特製のローズティー持って来てますよ?」
「やった~!!ありがとう。」
私は蔵馬の入れてくれたローズティーを飲みながら、他愛もない会話をしていた。
「そう言えば鳴鈴実の正装懐かしいね。」
「うん。覚醒してからは着てなかったから。」
「何だかあの頃から考えると大人になりましたね。」
蔵馬はクスクス笑いながら私を見ている。
「確かにあの頃は普通よりも子供っぽかったかもしれないけど・・・。」
私は頬を膨らませて拗ねてみる。
「それよりよー、鳴鈴実ちゃん何で正装着てるんだ??」
「この着物は妖力が込められた糸で出来てて結界と言うかバリアみたいな役目をしてくれるの。
D級以下の下等妖怪は私に触れられ無いの。」
「それって俺達人間はどうなるんだ?」
「人間は触れちゃう。妖気にだけ反応する感じ。
それに胸元が広いのは守護者との契約印が見えるようになってるんだ。」
そう言うと桑原君は安心したように私の頭を撫でた。
「蔵馬が見たのは子供が着る用の奴だからちょっと違うんだけどね。」
「やっぱり!?
なんだか違和感があると思ったんだ。
単に記憶が浅いのかと思っていたんだけど。」
「ううん。胸もこんなに開いてないし、裾は膝までしかなかったし、帯じゃなくて単に兵児帯だけだったから。」
蔵馬はなるほどと納得しながら珈琲を一口飲んだ。
「さ、じゃー幽助は寝てるし、僕たちはこっちの部屋で寝ますね。嗚鈴実は隣でゆっくりして下さい。
護衛は飛影でいいでしょ?」
「うん。ありがとう。じゃーみんなおやすみ。
幽助ベッドに運んであげてね。明日から大事な試合だから。」
私はみんなにおやすみお言うといつの間にかドアの前には飛影が立っていた。
「じゃー嗚鈴実の事頼みましたよ。」
「頼んだぜ。」
2人は飛影にそういうと相変わらず無愛想にフンッ!とだけ言って部屋を出ていった。
飛影は部屋に入るとソファーにゴロンと寝転がった。
私はその横に座ると飛影に一つお願いごとを申し出た。
「飛影、大会中できたら一緒に寝て欲しいんだけど…。」
飛影は突然の申し出にびっくりした顔をしてこっちを見ていた。
私は理由をわかってもらう為にそっと飛影の手に触れると、更にその行動に飛影は輪をかけて驚いていた。
「お前…」
そう言うと驚いた顔から一転、心配そうな表情を浮かべ、私を抱きしめた。
「ごめんね…。みんなの事信じてるんだけど、やっぱり怖くて…。」
飛影の手を掴んだ私の手は震えていた。
飛影は何も言わずに私を抱き上げるとベッドへと運んでそっと降ろすと、自分も隣に横になって抱きしめてくれた。
私は飛影の温もりに包まれ静かに目を閉じると夢のなかに落ちていった。