22 2つの仙華球

 

 

 

 

「コエンマ話があるんだけど?」

そう言って勝手にドアを開けて部屋に入ると青い顔のコエンマとジョルジュがリングの上を見つめていた。

「鳴鈴実!?こんな時にお前どこにいっておったんじゃ!?」

「左京に拉致られて、一試合分付き合わされてた。」

「はぁ!?何ともなかったのか!?」

「ないよ。美味しいカクテルおごってもらって質問攻めにされてただけ。」


私はコエンマの隣に座るとリングを見つめた。
テントの中にいる飛影と目が合うと私は笑顔を向けた。

飛影は鼻で笑う様にあっちを向いてしまいながらも、一瞬口元が緩んでいた気がした。


「あっちに行かなくてもいいのか?」

コエンマはほっとした顔をしながら、この状況でなぜ自分の所に来たのか?と言う顔をしている。

「今は大人しくしてるけど、飛影あの結界からいつでも出れるよ。」

「なんじゃと!?」

「ふふ、ただ私が左京といたから出なかっただけで、何かあれば簡単にでてくる。その時私はそばにいたら邪魔になっちゃうから。
後はコエンマに話しておきたい事があったから。」

「わしに話?」

「うん。私にもしもの事があった時と言うか、この先の癒術師の話。」

「この先!?」

コエンマは全く想像を出来ないと言う反応を繰り返していた。

「大丈夫。悪い話じゃないから。大事な話になるからジョルジュ、ごめんだけど席はずしてもらえないかな?」

私は申し訳なさそうにジョルジュに言うと、さっと部屋の外に出て行ってくれた。

「わししか聞けん話なのか?」

「そーゆー訳じゃないけど、私の中の仙華球の話なんだけど。」

そう言うとコエンマの目が真剣な物にかわり、まっすぐわたしを見据えている。


私はそっと目を瞑り覚悟を決めると一言だけコエンマに告げた。

「私は仙華球を2つ体内に宿している。」


その言葉を聞いた瞬間コエンマの顔が一気に強張った。

「それは本当か…?」

「うん。気がついたのは昨日飛影の腕を治して、妖力を回復させた時。」


「そうか…。」

そう言ってコエンマはしばらく考えこんでしまった。

代々受け継がれていく仙華球。
当たり前のように、体内に宿す球は1つである。

減る事はあっても、癒術師が増える事はない。
だが、癒術師とて馬鹿ではない。滅びゆく種族であってはならない。

そんな中、何千年に一人の確率で、覚醒時に新しい仙華球が体内で生みだされることがある。

そうすると、その癒術師は子を2人産み、仙華球を受け継がせる。
だが、2つの仙華球を体内に宿す事は大きな負担となり、所有者の妖気を多く必要とする。

その為、その分の妖気を持ち合わせている事が新しい仙華球を生み出すための大前提になり、癒術師の中でも並はずれた妖力の持ち主にのみ現れる。



次へ