31 準決勝と別れ

 

 

 

私は霊界から人間界へと戻ると試合会場へと急いだ。


「どーなってるやろ!!??」

もうすぐ到着と言うところで後ろから声をかけられた。


「鳴鈴実さぁ~ん!!!???」

「桑原君!?」

試合に出ているはずの桑原くんが後ろから走ってきた。

「いや~前の会場に飛ばされてさ(笑)」

「飛ばされた!!??」

「そーなんだよ。
相手が何か変な技使ってさ。
2回目です。はい。」

恥ずかしそうに頭の後ろを掻きながら面目ないという顔をしていた。

「試合ど~なってるの?」

「なんか飛影がやる気満々でさ。」

「飛影が?」

「ああ、あいつの妖気とかが半端じゃなくてよ。
調子もよさそうだし、大丈夫なんじゃねーか?」

「鳴鈴実さんはどこ行ってたんだ?」

「私は霊界に癒術師としての契約をね。」

「霊界と契約?」

「うん。色々あるんだわ。」

そう言って笑ってごまかして私は桑原君
をせかしながら2人で会場を目指した。

 

会場に入ると同時に飛影は私に気付くとニヤリと笑った。

肩に怪我をした様で軽く処置してある。

私は桑原くんが何かを叫んでいるのを無視して飛影の元へと走った。


相変わらず観客席との間に立って待っていてくれる。

「飛影ただいま。」

そう言って手を差し出すと少し安心したような顔をして私をふわりと抱きあげてくれる。

「試合は?幽助は?玄海さんは?」

「一度に聞くな。」

抱きかかえる飛影の胸を押しながら私は焦った様に聞くと少し煩そうに眉をしかめた。

「心配なんですよ。ね?鳴鈴実?」

そう言って蔵馬がかばってくれると飛影は小さく舌打ちして私を降ろしてくれた。


「試合はこれで終わりだ。
玄海は今戦っている。幽助も無事だそうだ。」

そっぽを向きながらもちゃんと説明してくれる。

私はそんな飛影が好き。

「良かった。
…ってよくない!!!飛影怪我見せて!」

私は一旦納得しながらも飛影の傷は話が別だと言わんばかりに飛影の腕を引っ張ると治療に入った。

「かすり傷だ。」

「これはかすり傷とはいいません!!まったくちょっと見てないとすぐ怪我する~。」

そう言って口を尖らすと飛影は大きなため息をついた。

「お前が黒龍波は打つなと言うからだろう。ささっと終われたものを。」

「私がいなきゃその後何時間も寝る癖に…。」

そう言ってプイっと横を向いて少し乱暴に治療をすると軽く飛影に睨まれた。

私は負けじとまたプイっと横を向くと蔵馬の笑い声が聞こえて思わず蔵馬を見た。

「クスクス、すいません。
なんだか2人が可愛くて(笑)」

「蔵馬!!」

飛影は蔵馬を睨んでいた。

「悪気はないんです。
なんだかホントに微笑ましくて。安心しました。」

「安心?」

私が首を傾げると、

「ええ。契約を交わそうが、妖力が増えようが飛影は飛影で、鳴鈴実は鳴鈴実なんだと思って。」

「そんなの当たり前じゃん。
私は私だよ。ねぇ飛影?」

そう言うと飛影は呆れた顔をして私を見ていた。

「お前は馬鹿か?」

「失礼な!!」

飛影の言ってるいみが分からずに私は拗ねていた。

「鳴鈴実はそのままでいて下さいね?」

蔵馬にそっと頭を撫でられ意味はわからないものの私自身変わるつもりはなかったから大きく頷いた。

 

暫くして大きな歓声と共に玄海さんがリングから降りてきた。

「おや?霊界との契約は済んだのかい?」

「はい。後は飛影のサインって言うか拇印だけです。」

私は玄海さんの問いに答えて契約書を見せた。

「そうかい。そりゃよかった。試合も終わった事だしさっさとさえろうか?」

そう言われて私達は各自でホテルへと戻った