20 2つの仙華球 ①

 

 

 

 

翌朝、ぼたんさん達と一緒に行く約束をしていた私は飛影達より先にホテルを出た。


会場に着いてトイレに向かう廊下で私は戸愚呂弟と鉢合わせた。
警戒していたつもりが目を合わせて数秒で、私は腹部に鈍い痛みを感じると、そのまま意識を失った。



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ふと目を開けると目の前には左京が座っていた。
オーナールームの一室。
隣に戸愚呂の姿はなく、私は思わずあたりを見渡した。

「手荒なまねをしてしまってすまない。
こうでもしないとあなたとゆっくり話せないんで。」

「私は話す事なんてないんですけど?」

「今回は私個人のお願いなんです。
世界一の高嶺の花と呼ばれるあなたと、純粋に話がしたかっただけです。」

私は警戒を解くことなく微量に自分の周りを妖気で覆った。

「何か飲みませんか?特に希望がなければお任せいただいてもいいですか?」

左京は私の意見は聞くつもりはないようで、淡々と話を進めていく。
私は付き合うしか脱出の方法は浮かばなかった。

私はしょうがなく付き合う事にした。

「何でも良い。」

そう答えると左京は人を呼んで何かを言いつけた。
暫くして赤い色の液体の入ったグラスがテーブルに置かれる。
「イタリア産のブラッドオレンジを使ったカクテルです。
お気に召すといいんですが。」

そう言って微笑みながら飲めとばかりに視線を注がれる。

私はためらいなくグラスに手を伸ばし口に運んだ。

オレンジよりも少し酸味があるものの全体的に濃厚なオレンジの味が口いっぱいに広がった、悔しいけどとっても美味しい。
「美味しい。」

ポロッとこぼれた言葉を左京は聞き逃す事なく満足そうにしていた。

「いつでもご用意させて頂きますよ。」

「で?話したい事って?癒術師の話は昨日したと思うけど?
まだ聞きたい事でもあったの?」

「もっと詳しくしりたい。
癒術師もその守護者の事も。そしてあなたがどんな方なのかも。私は根が貪欲でね。手に入れたい物や気になる事に執着するんですよ。」

「フン、しつこい男は嫌われるって知ってます?」

「あはははは。手厳しいですね。」

「まーいいわ。元々隠している訳でもないし、昨日の様に誤解されてる事もあるかもしれないから、でも浦飯チームの試合が終わるまで。
それ以上は付き合わない。」

「わかりました、お約束します。」

左京はそう言うと部屋に聞こえる試合のアナウンスを切った。

「話しの邪魔になるといけないので切らせてもらいますね。
試合が終われば賭けの結果が別アナウンスで流れますから安心してください。」

「わかった。で?左京さん、あなたは何が聞きたいの?まずは質問に答えていく。」

「そうですね、守護者は妖怪じゃなくてもいいのかな?」

「良いですよ。ただ、いくら強い人間がいてもS級妖怪にかなう事はない。そう考えると必然的に妖怪に絞られます。」

次々と出てくる質問に私は苦笑いをもらしながら答えていく。


 

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