ある日のゾル家の昼食

 

 

 

ボーン、ボーン、と柱時計が鳴っている。

 

 

 

時刻は午前11時。

 

 

 

イルミのいない休日を、いつもの通りゾルディック家のリビングで過ごしていた私は、パソコンの画面からひょいっと顔を上げた。

 

 

 

「あっ!いっけない、もうこんな時間じゃないの。そろそろ昼ごはんの仕度しなきゃ。なに作ろうかな?」

 

 

 

今日、この家にいるメンバーは、シルバさんに、ゼノさんに、カルトくんに、ミルキくんだ。

 

 

うーん。

 

 

 

「和食かなあ~?でも、シルバさんもゼノさんも、仕事から帰ってきたばっかりだからお腹すかせてるはずだし、ここはがっつりとボリュームのある中華系とか……いや、でも、カルトくん食が細いしなぁ……ミルキくんはなんでもいいや」

 

 

 

とりあえず、ふもとの市場に美味しそうなお魚でもないか見に行こう、と立ち上がりかけたのだけれども。

 

 

 

「――待てよ。そう言えば、今日の朝ごはんも焼き鮭だったような……」

 

 

 

そう言えば、昨日の夜ご飯もブリのお刺身とブリ大根だったような。

 

 

 

そう言えば、昨日の昼ごはんもカレイの中華あんかけだったような。

 

 

 

そう言えば、その日の朝ごはんも――

 

 

 

「ダメ――ッッ!!魚禁止!!たまにはお肉も食べないと、栄養バランス的に――というか、飽きるよねぇ、さすがに」

 

 

幸い、と言うべきか、育ちのいいゾルディック家の皆様方は、今のところ食事に関する文句は一言もおっしゃられませんが。

 

 

 

きっと、それは一日三食一年間、ずーっと魚を出し続けても、なにもおっしゃられないんだと思います。

 

 

 

絶対、そういう拷問の訓練だと勘違いされてる……!!

 

 

 

「ダメダメ!お肉、お肉でなにか……ううう、ダメだ、魚料理ならいくらでもレパートリーがあるのに、お肉を使った料理なんてステーキくらいしか思いつかないよー!っとと、そうだ、パソコン!お料理ウェブサイトになら、なにかいいレシピがあるかも!」

 

 

 

標高3770メートルのククルーマウンテン山頂までインターネットが使える世の中に感謝!!

 

 

 

カタカタ、キィを打って検索内容を打ち込んでいく。

 

 

 

「確かこの前、メンチさんがサイト開いてるって言ってたはずなんだけど――あ、あった!“ハンター界のアイドル若き美人天才美食ハンターメンチが贈る本日のステキな食卓”……長いタイトルだなぁ、昼ドラの題名みたい。まあいいや、ええっと、『お肉を使ったお昼ごはん』っと」

 

 

 

カタカタカタ……ポチッとな。

 

 

 

「おお、出た出た。どれどれ~、あっ、コレなんかいいかな。“豚肉と玉葱の甘辛炒め”。えーっと作り方は、まず最初に、狩ったばかりのグレイトスタンプの血抜きをし、皮を剥いで肩ロースを切り出します。二センチほどにスライスしたら、ハイイロツノゴケグマのツノゴケ小さじ一杯と一緒に、豚ロースを中火でソテー……なにこれ」

 

 

 

ちょっと、メンチさーん!?

 

 

 

「無理でしょ!?グレイトスタンプもハイイロツノゴケグマのツノゴケも、捕獲レベルどんだけだと思ってんですかっ!!?こんな食材、一般人がホイホイ用意できるわけないでしょーがー!!!」

 

 

 

却下!!

 

 

 

探しなおし!!

 

 

 

カタカタカタカタカタ……!!

 

 

 

「アレもダメ、コレもダメ……うー、どうしよう、全然いいのが見つからないようっ!」

 

 

 

カタカタカタカタカタカタカタカタ……。

 

 

 

「カタカタカタカタ……(どうしたの?頭かきむしったりして)」

 

 

 

「うひょあ!?」

 

 

 

振り向けば、ギタラクル。

 

 

 

ギギギギギイッと首をかしげて佇むその姿、不気味過ぎる!!

 

 

 

「お、おひ、お久しぶりです!!ハハ、ハンター試験以来ですねっ!?」

 

 

 

「カタカタカタカタカタ……(ナニ言ってるの?昨日も帰って来たじゃない。夜だけ。ポーがどうしても俺に会いたいって、泣きながら電話して来るもんだから飛んで帰って寝室に直行してキスして押し倒して――)」

 

 

 

「キャーーーーッ!!!そそそれ以上は言わないでっ!!それよりイルミ、その変装は色々びっくりするから、ちゃんと解いてから帰って来てよ~!!」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(うん。分かった)」

 

 

 

ギッチョン、と頷くなり、針山からマチ針を抜くように変装を解いていくイルミである。

 

 

 

メコンボコン。

 

 

 

うう……ほんと、久しぶりだなぁ。この不気味な変装解除シーン見るのも。

 

 

 

やがて、長く、黒い髪がさらりと肩をすべり落ち、イルミはゆっくりと瞼を上げた。

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

「おかえり、イルミ!お仕事、早めに終わらせてくれたんだ?」

 

 

 

「うん。昨日の夜はバタバタしちゃったからね。仕事に戻った後も、早く帰りたくて仕方なかった。そしたら、ターゲットの男が愛人を呼び出して人払いしたからさ、もうこれは、部屋になだれ込んできたところを待ち構えて、即行ヤッちゃうしかないよねって――」

 

 

 

「ススストップ、ストップ!!ごはん前にお仕事の話しないでって、いつも言ってるでしょ!?」

 

 

 

「ゴメン。嬉しかったから、ついね。ポー、会いたかった……」

 

 

 

いい終わらないうちに、ぎゅう、と抱きしめてくるイルミ。

 

 

 

ギタラクルに変装していたせいで、暗部服には針を刺したままだ。

 

 

 

ゴリゴリ、針の頭がほっぺたにあたって痛かったけど、でも、それ以上に幸せだった。

 

 

 

「イルミ……昨日は、無理して帰ってきてくれてありがとう。私も嬉しい。会いたかった……」

 

 

 

「ポー」

 

 

 

ぐっと、肩を捕まれ、顔を上げるとイルミの猫目が間近に迫っていた。

 

 

 

目を閉じる。

 

 

 

熱い吐息が、わたしの唇をゆっくりと包みこみ、イルミの唇が――

 

 

 

ボーン、ボーン……!!

 

 

 

「12時!!イルミごめんちょっと今はお昼ごはんの準備しなきゃで、でもメニューが魚ばっかでお肉じゃちっともいいのがみつからなくって!!」

 

 

 

「……うん。つまり、いつも魚ばっかりだから、たまにはお肉をって思ったんだけど、ネットで探してもいいレシピが見つからなくって困ってる――ってことでいいのかな?」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

流石はイルミ、付き合い長いってありがたいなー。

 

 

 

渋い顔をする私に、イルミはくりっと首を傾げた。

 

 

 

「気にすることないのに。俺も家族の皆も、ポーの料理は気に入ってるよ?毒の効果が容赦無いけど」

 

 

 

「でも、毎食魚だったら流石に飽きてくるでしょ?ゾルディック家はもともとお肉が主流だったんだから、たまにはお肉も食べたいでしょう?」

 

 

 

「まあ、そんなに言うならたまには肉もいいと思うけど……あ、そうだ」

 

 

 

「なに?なにか食べたいものでも見つかった?」

 

 

 

「うん。俺、アレが食べたい。ハンター試験で、ポーが作ってくれたやつ」

 

 

 

「ハンター試験で……って、ソレってもしかしなくてもカツ丼のこと?言っときますけどね、アレは作ってあげたんじゃなくて、私が作ったのをイルミとヒソカさんが勝手に食べちゃっただけなんだよ?」

 

 

 

「そうなの?じゃあ、今度は俺のために作って」

 

 

 

ね?と、不意打ちのようにおでこにキスをしてくるイルミである。

 

 

 

……ああああああ!!!

 

 

 

負けた!!!

 

 

 

今、完璧に女子として負けた気がした!!!

 

 

 

「何唸ってるの?もしかして、そんなに作るのが嫌だった?」

 

 

 

「ううん……違うの、なんでもないから気にしないで。よし、じゃあ、カツ丼にしよ!お肉、冷蔵庫にあったかなー?」

 

 

 

「せっかくだから、俺が捕ってくるよ。グレイトスタンプでいい?」

 

 

 

「……まさか、今からビスカの森まで行くつもり?」

 

 

 

「ううん。うちの敷地内に十頭くらいは放し飼いにしてあるから。頭数が少ないからめったに出会わないけど、探す気になればすぐ捕まえられるよ。待っててね」

 

 

 

言うなり、シュンっとその場から消えてしまうイルミである。

 

 

 

うわあ、それ、初耳だったあ~!!

 

 

 

もしかして、ハイイロツノゴケグマの方も探せばいるんじゃないだろうか。

 

 

 

ゾルディック家の敷地内、恐るべし……!!

 

 

 

「って、いつまでもうなってる場合じゃないや。イルミがお肉を届けてくれる前に、下準備終わらせとこっと!」

 

 

 

というわけで、厨房へ。

 

 

 

ご飯を炊いたり、玉ねぎを刻んだり、丼に使うだしをとったりしている所に、突然、ミルキくんが突っ込んできた。

 

 

 

顔が、トマトみたいに真っ赤だ。

 

 

 

「ポー姉!!」

 

 

 

「ミルキくん?ご、ごめんね、昼ごはん遅くなっちゃって。お肉が届いたらすぐに出せるから、もうちょっとだけ待っててもらえないかな?」

 

 

 

「違ぇーよ!カツ丼!!さっきイル兄から、監視カメラでなんとかってブタの生息地を調べろって指示があってさ、そんなの作るなら先に言ってくれよ!!お菓子食べちゃったじゃねーかよ!!二袋も!!!」

 

 

 

「それは私に怒ることじゃないでしょ?だからいつも、ご飯前にお菓子食べたらダメだよって言ってるのに。あれ?でも、ミルキくんはなんで知ってるの?カツ丼」

 

 

 

「なんでって、前にポー姉の海洋調査に引っ張りだされたときに、作ってくれたじゃん。クジラのカツ丼」

 

 

 

「あー!思い出した!そっか、そういやそうだったねー。ほんとはアレ、ブタ肉で作るのが一般的なんだ。クジラは蛋白であっさりしてるけど、豚肉だと肉汁が多くて、肉質ももっちりしてて、美味しいんだよ――って、どこ行くの、ミルキくん!!」

 

 

 

「ちょっと、そのへん走ってくる!!ポー姉、俺の分は超大盛りだからなコフーッ!!」

 

 

 

ドスドスドスドスドスドス……!!

 

 

 

「……行っちゃった」

 

 

 

「デブ根性だね」

 

 

 

「うわあ!?」

 

 

 

振り向けば、イルミ。

 

 

 

手には、見事なグレイトスタンプの肩ロースが……あれ?

 

 

 

「イルミ、残りは?」

 

 

 

「ミケに喰われた。まあ、ブタ一頭分も必要ないからね。これだけあれば充分だろ?」

 

 

 

それもそうか。ありがと、イルミ!」

 

 

 

「どういたしまして」

 

 

 

さてさて!

 

 

 

それではさっそくとばかりにトンカツつくって、カラッと揚げて、卵でとじてごはんにかけること十五分。

 

 

 

出来立てのカツ丼をワゴンに乗せて、みんなの待っている食堂に駆け込んだのだけれど――

 

 

 

「おまたせー!!って、あれ?」

 

 

 

「よう!ポー!!」

 

 

 

「元気そうだね!」

 

 

 

「ゴン、キルア!?なな、なんでいつの間に来てたの?」

 

 

 

シルバさんとゼノさん、イルミにミルキにカルトくん。

 

 

 

今日の昼食メンバーはこれで全員だと思っていたのに、なぜか、テーブルにはツンツン黒髪の野生児とゴンと、ふわふわ銀髪の元殺し屋少年キルアの姿が。

 

 

 

驚く私に、二人はおハシ片手ににかっと笑った。

 

 

 

ふう、とイルミが軽くため息をつく。

 

 

 

「ついさっきだよ。二人とも、用があってベントラの港町に来てたんだって」

 

 

 

「そ。んで、ポーを昼ごはんに誘おうと思って屋敷に連絡したらミルキが出てさ。ポーのカツ丼食うためにジョギング中だから邪魔すんなって。しかも、うらやましいだろってすげー自慢すっからさ、こうなったら俺達も行こうぜって話になったわけ!」

 

 

 

「ごめんね?急に押しかけちゃって」

 

 

 

ミルキくん……。

 

 

 

「に、睨むなよ!まさか二人が来るなんて思っても見なかったんだよコフー!!」

 

 

 

「はあ……まあいいか。ゴン、キルア!足りない分をすぐにつくってくるから、とりあえず、私の分のカツ丼を半分こして待ってて!

 

 

 

「オッケー!!うっひょおおお、ポーのカツ丼、相変わらず美味そう!!」

 

 

 

「ごめんね、ありがとう、ポー!」

 

 

 

厨房にダッシュ!

 

 

 

おかわりを見越して揚げておいたトンカツと、玉ねぎを出汁と卵でとじてごはんにかけ、食堂に戻る!

 

 

 

この間、約一分!!

 

 

 

「ひゃー、テンタ君があって本当に助かった。ゴン、キルア、お待たせ……」

 

 

 

「「おかわりいっ!!」」

 

 

 

「俺もっ!おかわりコフーッ!!」

 

 

 

天高く、すっからかんになった丼を掲げる食べ盛り達である。

 

 

 

「……だよね。読みが甘かったわ。じゃあ、ゴンとキルアはまた半分こ、ミルキくんはこっち。でも、もっとしっかり噛んで食べなきゃだめだよ?」

 

 

 

「わかってるよ!でもコレ美味すぎるぜコフー!!これなら何杯でもいける!!」

 

 

 

「美味い美味い!!いやー、ハンター試験のときはイル兄とヒソカに喰われて、俺達食べられなかったからなあ、ポーのカツ丼!!」

 

 

 

「うんうん!!それが、こんっなに美味しいだなんて!はあ~、ミトさんにも食べさせてあげたいよ!!」

 

 

 

サクサク、ガツガツ!!

 

 

 

いやあ、いい食いっぷりです。

 

 

 

見てて気持ちがいいくらいに、大盛りに盛ったカツ丼が、三人の口の中にどんどんかき込まれていく……おおっと、こうしちゃいられない!

 

 

 

「追加、カツ丼大盛り3つ……じゃ、足りないか、6つ!!」

 

 

 

急げや急げ!!

 

 

 

この自慢の念触手テンタ君は、一度インプットした動きを繰り返すことがなにより得意なのです!!

 

 

 

カツ丼6つ、30秒!!

 

 

 

「出来た!!」

 

 

 

戻る!!

 

 

 

バンッ!!

 

 

 

「お待た」

 

 

 

「おかわり」

 

 

 

「おかわりじゃ!!!」

 

 

 

……そう来たか。

 

 

 

「シ、シルバさん、ゼノさんも……お口に合いましたでしょうか?」

 

 

 

「ああ、美味い」

 

 

 

「うむ!揚げ物を飯の上に乗せてしまうとは新感覚じゃのー!いつもの魚料理も美味いが、こいつも絶品じゃ!!」

 

 

 

「えへへ、良かった!じゃあ、こっちの3つはゴンたちのおかわりだから……はい!こっちの二つをどうぞ。さーて、じゃあ私も食べようかな――

 

 

 

ようやく確保したカツ丼を手に、席に着こうとしたその時。

 

 

 

おず……と、挙がる、白い手のひら。

 

 

 

「す、すみません、ポー姉さま……ボクも……」

 

 

 

「カルトくんも!?いいよ、いいよ!!じゃあ、これあげるから、いっぱいおかわりしてね!」

 

 

 

「へー、カルトがおかわりするなんて珍しいな……って言ってる俺もおかわり!!」

 

 

 

「仕方ないよ~、こんなに美味しいんだから俺もおかわり!!」

 

 

 

「おかわりコフーッッ!!!」

 

 

 

「早すぎるよ!!そこの三人はもっとちゃんとよく噛んで食べなさいっ!!」

 

 

 

喜んで食べてくれてるのはホント嬉しいんだけど……うう、私もお腹空いてるんだよう!!

 

 

 

丼を回収し、ワゴンとともに再び食堂を出ようとしたその時。

 

 

 

「ポー、俺もー」

 

 

 

「はいはいはい、イルミもおかわりねっ!?」

 

 

 

二つ作るも3つ作るもおんなじだからいいけどさあ別に!!

 

 

 

厨房にダッシュ&トンカツ作る&食堂に戻る!!

 

 

 

「はあ、はあ……お待たせ……!!」

 

 

 

にゅーん、とテンタくんを伸ばして、出来立てのカツ丼を皆の前へ!

 

 

 

そうして、気がつく。

 

 

 

「じ、自分の作るの忘れてたああああっ!!!?」

 

 

 

撃沈……もう、立っている気力もないよ。

 

 

 

「うう……一生の不覚……」

 

 

 

「ポー」

 

 

 

見上げた先にはイルミがいた。

 

 

 

スッと、目の前に差し出される丼。

 

 

 

「はいはい、イルミももう一回おかわりね……」

 

 

 

でも、イルミは無表情に、ふるふると首を振った。

 

 

 

「食べなよ。これ、ポーの分だから」

 

 

 

「え……!」

 

 

 

ほかほか、鼻先で湯気をたてているのは、つい今しがたイルミに手渡したはずの、おかわりのカツ丼だった。

 

 

というか、イルミ、一杯目のカツ丼、まだ半分くらい残ってるし。

 

 

 

「じゃ、じゃあ、さっきのおかわりって――」

 

 

 

「うん。嘘。ごめんね。キープしとかないといつまでたってもポーが食べれないと思って」

 

 

 

「イルミぃ~~!!!!」

 

 

 

「さっすがイル兄、抜け目ないよなーおかわりコフ……ッ!!?」

 

 

 

ドウッ!!と、イルミの身体から吹き出したドス紫の暗殺者オーラに、ミルキの手からカラン、と丼が滑り落ちた。

 

 

 

「ミルキ……今、なにか言った?

 

 

 

「……いいえ。もう俺、お腹一杯です」

 

 

 

「うん。そうだよね。ゴンとキルアも、今食べてる一杯をよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーく噛んで、味わって食べなきゃダメだよ?

 

 

 

くりっ。

 

 

 

と、可愛く首を傾げる(しかし真顔)イルミに、名指しされた二人はガックガック頷いた。

 

 

 

ひょおおおおおおおおおう!!

 

 

 

怒ったイルミ怖あ!!

 

 

 

……でも、

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

「どうしたの、ポー。笑ってないで、冷めないうちに早く食べなよ」

 

 

 

「うん!……イルミ」

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「ありがとう!」

 

 

 

「……どういたしまして」

 

 

 

なんかもう、お腹すいたの忘れるくらい、幸せでいっぱいでした!!