「やりすぎだあーーーーー!!!」
「ポー!!いくらなんでも怖すぎるよ!!!!」
救護テントの下で目を覚ましたゴンとキルアは、私の顔を見るなり盛大に憤慨した。
ごもっとも。
二人のお怒りはごもっともである。
だがしかし。
「ご、ゴメンね~。皆、想像してたより脅かすのが楽しかったらしくて……で、でも、幸いにも死んじゃった人はまだ一人も出てないし、死ぬほど怖いって評判で、侵入者の数はウナギ登りに増えてるんだよ!?只今、待ち時間三時間!!」
「この炎天下でそんなに!?」
「うん!それにね、サービスも充実してるの。熱射病や脱水症にならないように、お客さんたちにはかき氷の無料配給や、ウチワと日傘の無料貸し出しもあるんだよ!はい、二人にもあげる。あとこれ、試しの門を全部開いた記念の、ミケの特製ヌイグルミ!!」
「“流血の紅きククルーマウンテンかき氷”……ただのイチゴ味の特大かき氷に、なんでこんな仰々しい名前つけてんだよ……」
「うわあ!でも、上には練乳がいっぱいかかってて美味しいよ!あ。ねえキルア。こっちのウチワにはミケの顔のイラストつきだし、裏にはゾルディック家の宣伝文句や暗殺依頼用の電話番号が書いてあるよ?」
「39-39-37564(ザクザク皆殺し)……ほんとだ!うわあ。しかも、なんだよこの日傘。おふくろの持ってるのと一緒じゃん!」
「キキョウさんがデザインするって言ってくれたから、やってもらったらそうなっちゃったんだよね。ーーで、二人とも。おばけ屋敷はどうだった?」
「どうって、あんなの無茶苦茶もいいとこじゃん!!!」
「そうだよ!!本物のミケは出てくるし、カルトくんの首は落ちるし、ゴトーさんにはドス持って追い掛け回されるしーー」
「ゼノ爺ちゃんやマハひい爺ちゃんまで出てくるし、おふくろに鼓膜破かれそうに鳴るわ、親父にコンニャクぶつけられるわ、イル兄の首は伸びるわ、ヒソカの生首は飛んでくるわ……」
「ぷっ!」
「……っあはははは!」
「あははははっ!!な、なんか、思い出したら急に可笑しくなってきたよー!」
「お、俺も!!あー、苦しい。なんだかんだで、結構面白かったのかもな。スッゲー怖かったけど!」
「そう。よかった!じゃあ、二人でもう一周イッとく?」
「ヤダ!!」
「ぜってーパス!!!」
間を置かずにお断りされたところに、イルミとヒソカ。ミルキくんとシルバさんがやって来た。
「なんだ、お前達。もう起きたのか?」
ゴンとキルアの顔を見て、シルバさんは深々と溜め息をつく。
「全く……お前たちがミケをけしかけたせいで、脅かし用のコンニャクがなくなっちまったじゃねぇか。どうしてくれる」
「悪いのは親父だろ!?」
「あらら。全部ミケが食べちゃったんですか?しょうがないなあ……じゃあ、かわりにナマコでも使いましょうか」
「だから、ポー姉、さっきから容赦なさすぎだって!!」
「ほんとだぜ。はあー、それにしても、まさかイル兄の首があんなに伸びるとは思わなかった」
「うん。しかも、ヒソカまで脅かし役になってるなんて」
「クックックッ!!驚き怯えるキミたちの顔……スゴく魅力的だったよ☆」
「怖かっただろー。針を使って肉体を操作したんだ。だけど、続けてやったらちょっと疲れてきちゃってね。もうすぐお昼だし、ローテーションで休憩に回ってくれって言われたから抜けてきたんだけど。ポー、一緒に行かない?」
「あ、もうそんな時間?なら、皆でご飯物の出店を冷やかしに行こっか!」
「うん!!」
「賛成☆んー。港中がいい匂いで一杯だし、お腹空いてきちゃったよ」
「買い出しに行くなら、コンニャクのかわりになるものを買ってきてくれ」
「了解しました!シルバさん、すっかり熱中してますね」
「ああ。暗闇の中でターゲットの身長、体格を瞬時に捉え、糸の長さを調整し、悟られないよう首筋を狙う……これが、なかなか難しくてな」
「なんか、それって釣りっぽいじゃん。ゴンは得意そうだよな?」
「うん!俺、100発100中でヒットさせる自信あるよ!!ポー、午後からは俺にもその役やらせてよ!」
「いいよ。じゃあ、シルバさんと一緒に頑張って脅かしてね!」
「うん!よろしくお願いします、シルバさん!」
「ああ~!!ズルい!ゴン!ゴンはボクと一緒に生首になろうよ~!!★」
「ヤダ、べーっっ!!」
「じゃあ、キルはネコ娘になってね。兄ちゃんが針で操作してあげる」
「誰がなるかーーっ!!」
そんなこんなで、私たちはド派手に盛り上げた夏祭りを、最後まで存分に満喫しまくったのでありました。