お正月特別企画! ある年のゾル家の元旦!!

 

 

 

 

「あけましておめでとうございまーす!!」

 

 

 

「おめでとう。みんな」

 

 

 

1月1日!!

 

 

 

この日ばかりは、流石の暗殺一家ゾルディック家も休業日!!

 

 

 

お昼過ぎに目を覚まし、テレビにビールにおせちにお雑煮片手に布団の上でゴーロゴロ……なんてことはイルミとキキョウさんがダブルで許してくれなかったけど。

 

 

 

うん……いつもどおり五時起きで、しかも全員でククルーマウンテンの頂上までジョギングして初日の出を拝みました。

 

 

 

ムッチャクチャ寒かったけど、パドキアの新春の空気はみずみずしく澄んでいて、

金色にかがやく朝日が綺麗だったー!!

 

 

 

ということで、シャワーを浴びて、キキョウさんにお正月用の振袖に着つけてもらって、いざ、朝ごはん!!!

 

 

 

と、思ってたのに。

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!シルバさん助けて――――っっ!!」

 

 

 

バーン!と食堂の扉を打ち抜く勢いで駆け込んできた私を、ゾルディックファミリーの面々&ご当主は「またか」という顔で出迎えた。

 

 

 

おおお、キキョウさんも今日は着物にするって言ってたけど、シルバさんも着物だ!

 

 

 

いつもの暗殺武道着よりも、渋さがましております!

 

 

 

かっこいー!

 

 

 

「正月くらい、慎ましくあけましておめでとうと言えないのかお前は」

 

 

 

「だってイルミが……キャアアアアアアアアイヤアアアアアアア帯引っ張らないでええええええええええええ――!!?」

 

 

 

「父さん、母さん、ミルキにカルト、あけましておめでとう。てことで、俺とポーはまだ大事な姫始めが終わってないから部屋に戻るよ。おせちとお雑煮は後で食べるから残しておいてね」

 

 

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア助けてシルバさん――ッ!!!」

 

 

 

帯を引っ張り袖を絡めとり、あげく俵のように私の身体を担ぎあげて、部屋に連れ戻そうとするイルミに、シルバさんは複雑そうな顔で眉間を抑えた。

 

 

 

「全く、お前達は年明け早々……」

 

 

 

「ポー!仮にもゾルディック家の嫁になろうと言うものがなんですかだらしない!!夫の無体など一撃で沈められなくては、この先やっていけなくてよ!?」

 

 

 

「き、キキョウさん、それってかなりの爆弾発言あああああああシルバさんシルバさん止めてくださいシルバさんってば!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

銀の髪のご当主は無言である。

 

 

 

ス、とその手が胸元に。

 

 

 

途端、背筋をゾワッとしたものが這い登り、私とイルミは同時に真横へ飛んだ。

 

 

 

二本の軌跡。

 

 

 

タン、タンッ!!と、小気味のいい音が背後に響く。

 

 

 

振り向くと、そこには深々と壁に突き立てられた二振りのナイフと、それらに縫い止められた100万ジェニー札が。

 

 

 

あ、あと一呼吸遅かったら……。

 

 

 

「いいいいきなりなにするんですか――!!?」

 

 

 

「あーびっくりした。久しぶりだったからすっかり忘れてたよ」

 

 

 

はあ、と溜息一つ。

 

 

 

ご無体な真似をようやく諦めたらしいイルミが、壁から回収したジェニーの束を私に手渡した。

 

 

 

「はい。ポーの分」

 

 

 

「へ?」

 

 

 

え、これってまさか……。

 

 

 

「父さんからの落とし玉。毎年のことだけど、物騒だからやめてって言ってるのに絶対やめないんだ」

 

 

 

くりっと迷惑そうに首を傾げるイルミに、シルバさんはフッフッフ、と不敵な笑みを浮かべてみせた。

 

 

 

「正月だからって油断するな」

 

 

 

「怖すぎるっていうか多すぎますよ!!?そそそそそんなシルバさん、いくらお年玉だからってこんなにいただくわけには……!!」

 

 

 

「気にする必要はない。俺のナイフを避けた。そいつはその成功報酬だ。うちは職業柄、小遣い制がないからな。失敗した奴には何もやらん」

 

 

 

ということは。

 

 

 

そこのテーブルに青い顔して突っ伏してるミルキは、失敗したってことだな。

 

 

 

うん。

 

 

 

流石、教育的だ。

 

 

 

「あっ、ねえ、カルトくんはどうだった?大丈夫、怪我してない?」

 

 

 

黒い留袖姿のキキョウさんの隣にちょこんと座ったカルトくんは、目にも鮮やかな朱赤の振袖を金の帯に合している。

 

 

 

私の言葉にこっくり頷き、

 

 

 

「お父様と、ゼノ爺さまは――でも、マハ爺さまのハイキックが避けきれませんでした」

 

 

 

「え!?じゃ、じゃあもしかしてゼノさん達も――」

 

 

 

「あけおめじゃああああああああああああああ―――っっ!!!!!」

 

 

 

ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

言ってる側から天井と床下がガコン、と開いて、年明け早々元気なお年寄りが襲いかってくるるううううううう!!!

 

 

 

「あああ“驚愕の泡(アンビリーバブル)”っ!!ゼノさん、マハさん!あけましておめでとうございますっ!!」

 

 

 

おおおおふたりとも、なんという恐ろしく速い手刀とハイキックか……!!

 

 

 

私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

 

ストストっと目の前に降り立ったゼノさんとマハさんは、満足そうな笑みを浮かべつつ、これまた分厚い札束を差し出した。

 

 

 

「明けましておめでとう。いやー、流石だの。ワシからの報酬200万ジェニーじゃ。受け取りなさい」

 

 

 

「……」

 

 

 

お隣ではマハさんが、イルミそっくりの猫目を細めてにーったりと笑いながら札束を差し出しておられます怖い!!

 

 

 

「へー、凄いじゃない。初めてで三人ともからお年玉がもらえるなんて、俺とキルくらいのものだよ。なあ、ミルキ」

 

 

 

「……」

 

 

 

「お前、やっぱり今年もダメだったのか」

 

 

 

「うるさいなっ、ほっといてくれよコフ――!!それより、飯だ飯!さっさと雑煮とおせち食おうぜコフギャアアアアアアアアアアアア痛え痛え痛えよイル兄正月早々腕卍固めとかやめてくれよ――!!」

 

 

 

「反省の色がなさすぎるんだよ」

 

 

 

ははは。

 

 

 

ミルキくん、顔だけ真っ赤で鏡餅みたい。

 

 

 

ま、なにはともあれ、今年も皆が元気そうで何よりです。

 

 

 

トリップ生活も二年目に突入。

 

 

 

これからも、どうぞ末永く宜しくお願いいたします!!