「ポー!久しぶり。元気そうだね!」
「来てやったぜ~!へぇー、話には聞いてたけど、なかなか本格的じゃん」
連絡があってから、三十分後。
かき氷やら、わたあめやらの露天菓子を両手に抱え、二人の少年たちは元気いっぱいにやって来た。
ツンツン黒髪。
ノースリーブシャツからのびる腕を、こんがりと日焼けさせた男の子、ゴン・フリークスと、
真夏でもちっとも肌色の変わらない、銀髪ニャンコ、キルア・ゾルディック!
今回の、お客様……もとい、侵入者第1組目をお願いしている、メインゲストのお二人さんです!!
「よかった!二人共、開場に間に合わないんじゃないかって心配してたんだよ?」
「悪ぃ、俺は早く行こうって言ったんだけど、ゴンの奴が寝坊してさー」
「キルアだって!俺が先にポーの所に行こうって言ってるのに、露店屋さんでお菓子買うって聞かなかったんじゃないか!!」
「あはは、なるほどね。まあいいよ。時間ぴったりだし。さて、ゾルディック家お化け屋敷、いよいよ開場だよ~」
「うわ~!ワクワクするね、キルア!」
「おう!」
パンパカパーン、とお馴染みのファンファーレと共に、ゾルディック家の執事さん達が、入り口にかけた垂れ幕をバサーッと取り払う。
現れたのは……。
「試しの門っ!!?」
「すごい!キルアの家にある本物にそっくりだ!!」
「驚いたでしょー!重さは本物よりも軽くしてあるけどね!七の扉まで開いた人には、ミルキくん監修、ミケの特製オリジナルぬいぐるみをプレゼント!」
「何やってんだよブタミルキ……で?一の扉は何トンあるわけ?」
「片側十キロ」
「楽勝じゃん!!」
「一般向けだからね。それでも、七の扉まで開こうと思ったら一トン以上の力がひつようになるんだから、普通の人には大変だよ?」
「それもそうか」
「よーし、そんならとっとと開いて、中に入ろうぜ~!」
ゴンとキルア。
二人同時に扉を押す。
しっかりと足を踏ん張って、少しずつ、開いていく。
一枚、二枚……。
「むぐぐぐ……!!」
「むぎぎぎぎ……!!」
ざわざわ、ざわめくお客さん達。
顔をまっ赤に、傍目には力いっぱい押しているように見えるけど、
実は二人共……扉を壊さないように慎重に、慎重に開けていてくれてるんだよね。
ソレはソレでしんどそうだ。
「あ、あと一枚……!!」
「ち、力入れすぎないようにっていうのも、意外と疲れるな……うぎぎぎ!!」
ガコオン!!
「開いた!」
わあっと、湧き上がる歓声!!
「おめでとうごさいまーす!!賞品は出口での受け渡しになりますので、お化け屋敷を楽しんできてね!暗いから足元に気をつけて。それじゃ、いってらっしゃーい!」
「うん!いってきまーす!」
「泣くなよな~、ゴン!」
「キルアこそ!」
和気あいあい、二人は試しの門をくぐって、暗い通路の奥へと進んでいく。
「……さーてと」
小さな背中が闇に溶けて見えなくなった頃、私は通信機を取り出した。
「ゾルディック家各位に告ぐ。こちら、ポーです。ターゲットは計画通りに建物内部へ侵入しました、どうぞ」
***
「すごい……中も本格的だね!」
「ああ。まさか、親父が地元の祭りに金出すとは思わなかったぜ。なんだかんだで、みんなポーには甘いんだよなー」
カツン、カツン。
暗闇に反響する二つの足音。
あたりに漂う冷たい空気が、汗だくだったゴンとキルアの身体から、体温を奪っていく。
石造りの、長い通路を抜けた先は――
「うわあ!森だ!!」
「すっげー!これ、作りもんじゃないぜ?全部本物の木や草じゃん!まさか、俺んちの敷地から持って来たのかよ……」
「へえ~。あ、天井はドームになってるんだ。本当の夜みたいに真っ暗……な、なんかちょっと怖いね……」
「バーカ。お化け屋敷なんて、所詮は子供だましだろ?ビビんなって」
「う、うん……」
ガサガサッ!!
『ガア―――――――――ッ!!!!』
「ぎゃあーーーーっ!!ミミミミ、ミケだ――!!!」
「落ち着けって!ほら、よく見てみろ。ただのキグルミだろ?」
言うなり、草むらから飛び出してきたミケの耳を掴み、ぐいっと引っ張る。
頭がぽろっととれたりはしなかったものの、中からはくぐもった悲鳴が。
キルアが手を離すと、ちょっと聞き取りにくい文句を言いながら、ミケのキグルミは草むらの中に消えていった。
「ほらな?ゴン、さっきからお前、ビビりすぎ!」
「わ、笑わないでよキルア~。あ、ほら、あの奥の茂みにも、ミケが隠れてるよ。さっきのキグルミよりも大きいね……な、なんか本物に見えてきた」
「はあ?なに言ってんだよ、情けねー。見てろよー」
「あっ!駄目だよ、石なんか投げちゃ!」
シュッ!
コン!
「ほーらな」
「もう!中の人が怪我したらどうするのさ!」
「かたいこと言うなって。あんな頑丈なキグルミなんだから、痛くもなんともないだろ」
……グルルルルルル!!
「あれ……?」
「どうしたんだよ、ゴン。さっさと先に進もうぜ?」
「う、うん……今ね、あのミケが唸って、目が光った気がしたんだけど……」
「そういう仕組みなんだろ?最近のキグルミって、よくできてるから……」
グルルルルルル………!!
「「へ?」」
ガウガウガウガウガウガウガウガウ!!
「ギャア―――――――ッッ!!!!!」
「ほ、本物のミケだ――っっ!!」
二人が飛びすさった瞬間、草むらから空へ、高く跳躍したミケが着地した。
すさまじい風圧に地面はめり込み、周りの木々が根こそぎ倒される。
ガルルルルルルルルル……!!
「に、ににににに」
「逃げろーーーー!!!」
ガウガウガウガウガウ!!!
「ななななんで!?なんで本物のミケがいるんだよ!!??てかなんでこんなに走り回れるほど、広いんだよーーーーー!!?」
ポーの馬鹿ーーーー!!!
叫びながら、ゴンとキルアはものすごいスピードで森の中を疾走していく。
「キルア!!キルア!!ミケはゾルディック家の人間の言うことなら聞くんでしょ?なんとかしてよ―っ!!」
「あっ、そ、そうか!!ミケ、俺だ!おすわり―――っっ!!!」
ピイ―――――ッ!!
振り向きざま、キルアが鋭く指笛を吹く。
すると、
……クゥーン。
「ミ、ミケが止まった……ああーよかった!!」
「はあ、はあ……つ、疲れた。もー!!脅かすなよなっ、ミケ!!」
クウ~ン?
くりっと、首をかしげて、おすわり。
それはもう完璧なおすわりで、こちらを見つめているミケである。
ついさっきまで噛み殺す勢いで追いかけ回していたことなどすっかり忘れ、パタパタと尻尾まで振っている。
「ミケ……ひ、久しぶりだね!」
「全く!ポーも人が悪いよな。こんなに危ないドッキリが仕掛けてあるなら、先に教えてくれればいいのに!」
「でも、おばけ屋敷なんだから、脅かす内容を言っちゃったら面白くなくなるじゃない?」
「それはそうだけど……ん?」
「誰か来るね」
「本当だ。あれは……カルト?」
真っ暗な森の奥から近づいてきたのは、丸い提灯の明りだった。
ぼんやりとした光の輪に照らし出される、赤い振袖の襟元と、おかっぱ頭。
細く、白いあごがぼうっと浮かび上がる。
深くうつむいているので顔ははっきりしないが、ゴンもキルアも、あれは末っ子のカルトに違いないと思った。
「カルトくん!」
「おい、待てゴンッ!!ここが何か忘れたのか!?うちをテーマにしたおばけ屋敷だぞ?罠だろ。十中八九、絶対になんかあるに決まってんじゃねーか!!」
「で、でもさ。キルアは嬉しくないの?久しぶりに会えた妹なのに」
「そ、そりゃあ……」
「……キルア兄さま」
闇に溶けて、消え入りそうな声。
カルトはうつむいたまま、手招いている。
「ほら、呼んでるよ?行ってあげなよー。もし罠だったとしても、キルアならすぐに逃げられるじゃない」
「ま、まあそうだけどさー。……まあいいか。カルトならそんなに警戒することもないだろ。そのかわり、ゴン。お前も来い!!」
「え!?」
いやだあ~!と、暴れるゴンを引きずって、キルアはカルトに近づいていく。
完全に距離を詰めることはせず、間合いギリギリで立ち止まると、カルトはゆっくりと顔を上げた。
「ふん!どうせ、顔を上げたらのっぺらぼーってオチだろ。そんなの怖くもなんともないね!――って、あれ?」
「顔……ちゃんとあるね?」
「本当だ。おい、カルト。お前、俺達を脅かしに来たんじゃないのかよ。お面でもかぶり忘れたのか?」
ばっかだなーと笑いながら、ぽん、と、キルアが何気ない気持ちでカルトの肩を叩いたときだ。
ぐらり、とおかっぱ頭が不気味に傾いだ。
ゴトンッ!
「!!!???」
「く、首が落ちたあ―――――っっ!!!??」
「ギャアーーーーーッッ!!……あっ!?待ってよキルア!置いてかないでよ―!!」
派手な叫び声とともに、キルアとゴンは走り去る。
そして、二人の気配が完全に気配が遠ざかったのを見計らい、近くの茂みから本物のカルトが現れた。
地面に落ちた生首を両手で拾い上げ、ガション!と、元通り本体に設置。
小型のインカムに向かって、囁くように言う。
「……こちら、カルト。予定通り、ターゲットと接触しました」
***
「アハハハハハハハッッ!!!は、腹がよじれる……!!息出来ね――!!アハハハハハハハ……!!カルト、よくやった。持ち場にもどっていーぞー」
「ミルキくん、さっきから笑いすぎ」
ところ変わってモニタールーム。
監視カメラに写し出される映像をモニタリングしつつ、ミルキはイスがきしむほど反り返ってバカ笑いしている。
うーん。
それにしても、予想外だ。
二人がこんなに怖がってくれるなんて。
「ゴンもキルアも本気だったからな~。こりゃあ、普通のお客さんにはよっぽど手加減してもらうように頼まないとダメかもねー」
「はあ?そんな必要ないって!!」
さきほどのゴンとキルアの絶叫顔を、しつこいくらい巻き戻して再生しながら、ミルキは山盛りのたこ焼きを三ついっぺんに口に放り込んだ。
「ひゃふははんてひっへるへほは……やつらは、ゾルディックの敷地への侵入者だろ?死ぬかもしれないって覚悟の上でやって来るからには、こっちも全力でもてなさないと意味ねーじゃん!」
「それはそうだけど……はあ。念のために、救急車をもう三台増やしておこうかな?あとは、心肺蘇生装置と、それを扱えるライフセイバーの子達も待機させてるし、お客さんには入り口で死亡承諾書にサインしてもらってるし、ペースメーカーをつけているひとや、妊婦、お年寄り、心臓の弱いかたや体調の優れない方、この世に未練のある人の入場もお断りしてる……このへんは万全なんだけど」
「じゃあいいじゃん!だいたい、なってったってうちのお化け屋敷なんだから。心臓発作で死人が出るくらいじゃなきゃ、ゾルディックの名が廃るぜ!」
「まあ、それはそうだけど」
くりっと首を傾げたとき、ピピピ、と携帯が鳴った。
「はい、もしもし。……あっ!ヒソカさん。遅いですよー、ゴンもキルアも、もう中に入っちゃいましたよ?……え?ボクはどっちかっていうと脅かされるよりも、脅かす方に興味がある?……別にいいですけど。じゃあ、いつものピエロメイクして、首から下を“薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)”で隠して、懐中電灯持ってウロウロしてて下さい」
ピッ。
携帯を切る。
ミルキがなんだか、複雑な顔をしてこちらを見ていた。
「何?」
「……いや。ポー姉って、ほんと容赦ないよなって思って」
「そう?」
***
ヒュ~~ドロドロドロドロドロ……。
「一枚………二枚………三枚……四枚……五枚……六ま……チッ!領収書が一枚足りねぇじゃねーか。侵入者、さてはてめぇらの仕業か……?」
ギラリ。
「ギャアアアアアア――ッ!!ゴゴゴゴゴトーさんがドス持って追いかけて来るよーーーっ!?」
「なんでゴトーが井戸の中で帳面つけてんだよ―――っ!!??」
「わかんないようっ!とにかく逃げよう!?……あ、キ、キルア、キルア!あ、あれ、あれってヒトダマじゃない?」
「えっ?ほ、ほんとだ……あ、あんなの、何かに火つけて燃やしてるだけだろ……?」
「くらえ!“牙突(ドラゴンランス)”!!!」
ドカーン!!
「ギャーーーーっ!!」
「危ねえーーーっ!!今度はゼノじいちゃんかよ!!てかそれヒトダマじゃないだろーーーっっ!!!??」
「だっはっはっはっは!!油断大敵じゃ!」
「わあああっ!?い、今通り過ぎたの、お地蔵さまかと思ったら、赤い前かけしたキルアのひいひいお爺さんだった!!」
「マハじいちゃんまでいるのかよ!!?」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!
「わーーーーーっっ!!!」
「てめえもいんのかクソババア―――――ッッ!!!!」
「キキキルア!キルアーー!!さっきから走っても走っても、出口なんか見つからないよ!!俺もう嫌だよーーーー!!」
「落ち着けって、ゴン!大丈夫、俺がついてるから……」
走っても走っても森の中。
二人で草陰に身を隠し、あたりの様子を探ったときだ。
生暖かい空気が、髪を揺らした。
はっと、ゴンが顔を上げる。
「潮の匂い……出口はこっちだ!!は、早く出ようよ!!」
「だな!こうなったら、出口までダッシュだ!!」
しかし、立ち上がった瞬間、背筋にすさまじい悪寒が走った。
「危ない!!」
シュ……ッ!!
耳のすぐそばを掠めていく何か。
直感で樹上を見上げるが……気配はない。
ない、が。
「……いる。誰だ!!そこにいる奴、出てきやがれ!!来ないならこっちから行ってやる……!!」
「キルア……!!」
キルアの身体からオーラが溢れだす。
しかし、その力の高まりを、低い笑い声が遮った。
「ふ……っ。この俺のコンニャクを避けるとは、二人ともいい動きだ」
「キルアのお父さん!?」
「親父までいんのかよーーーっ!!ああもう、どんだけいるんだよ!?この中、うちの家族勢揃いなのかよ!!夏は稼ぎどきだろ!?暗殺の仕事ほっぽってなにやってんだよっ!!?」
「その仕事が嫌で、勝手に家を飛び出したお前に文句を言われる筋合いはない」
「う……!」
「キルア、ものすごいヤブヘビだったね……。ねえ、シルバさん!俺たち、もう充分怖がったから、そろそろ外に出たいんだけど、いいよね?」
「ダメだ。確かに、ここを進めばすぐ出口がある。だが、ゾルディック家のお化け屋敷からそう簡単に出られると思うな……」
パチン!
遠端、出口に通じる道の周りの木という木から、無数のワイヤー付きコンニャクが放たれた。
振り子運動により、縦横無尽に飛び交うコンニャク。
その数、およそ100以上。
見つめるゴンの眉間に、深いシワが刻まれる。
「くそっ……!こんなに沢山のコンニャク……当たらずに道を突き抜けるなんて、どうしたらいいんだ!!」
「なにシリアスになってんだよ……ただのコンニャクだろ?当ってもいいじゃん。とっととゴールしちまおうぜ?」
「ヤダ!!それだとシルバさんに負けたような気がするから、絶対に当たりたくない!!!」
「う……、そ、そう考えると確かに……ああっ、そうだ!」
ピイ――――――ッ!!!!
「指笛……?あっ、そうか!?」
「そーいうこと!」
ゴンとキルアは顔を見合わせてニンマリ笑う。
なんのつもりだ、と言うように、片眉を上げるシルバだが……そのとき、猛然とこちらに近づいてくる、ある気配に顔をしかめた。
「まさかーー」
ガウガウガウガウガウガウガウ!!!
「よっしゃあ!!いい子だミケ!!そのまま全部食っちまえ!!」
「すごーい、あっというまに無くなってく!!」
ガフガフガフガツガツガツガツガツ……!!!!
「ああっ!!こらミケ!!俺のコンニャクを喰うな!!餌ならさっきちゃんとやっただろうが!?」
「親父、破れたりっ!!」
「今のうちにダッシュダッシュ!!」
慌てるシルバ、コンニャクに夢中のミケを一目散に通りすぎ、ゴンとキルアはついに念願の出口に向かってゴール!!
……の、はずが。
ガンッ!
「いてっ!?」
「な、なんだよこのゴール!ただのハリボテじゃん!!」
「ど、どうなってるの……」
「教えてあげようか?」
「ーーその声は!?」
「イル兄!!」
バッと振り向く。
いつの間にそこにいたのだろう。
闇の中にイルミがいた。
無表情に、片腕を上げる。
「や。久しぶりだね、二人共。ここまでたどり着いたから教えてあげるけど、このお化け屋敷に出口なんてものはないんだ」
「出口がない?」
「どういうことだよ!出口がなきゃ、出られねーじゃん!」
「そんなことはないよ。出る方法は3つある。①侵入者が家のものに捕まる。②恐怖のあまり気絶する。③死亡する。これらに該当したものは、執事達によって速やかに外へ運び出される仕組みだ。現に、お前たちの後に侵入した者たちは、着々と排除されているよ」
「なんつー恐ろしいお化け屋敷だ……」
「でも、それだったら俺たちはいつまでたっても出られないよ?」
「そうだよな。捕まるようなヘマはしないし、怖いって言っても、気絶したり、死んだりするようなレベルじゃないね!」
「そうかな?」
「そうだよ!」
「……本当に?」
くりっ。
イルミが首を傾げた途端。
ギ……ギギ、ギギギギギイイイイイイーーーーーーッッ!!
「「首が伸びたーーーーーーーー!!!???」」
尻もちをついた二人の目の前で、イルミの白い首が、二、三メートルもの高さまで伸びていく。
あまりのことに我を失い、わたわたと逃げようとする二人ーーしかし、そこには、闇の中に不気味に浮かび上がる生首が……。
「クックックッ……★ゴン……キルア……!そんなにびっくりされると……ボク、興奮しちゃうじゃないか~★★★!!!!」
「ギャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」
「ヒ、ヒソ、ヒソカの、な、なな生……く……」
ガク……!!
「はい。二人とも、アウト」
折り重なるようにして倒れたキルアとゴン。
針を引き抜き、伸びた首を収納したイルミは、さりげなくしっかりとキルアを抱きかかえ、くりっと首をかしげてみせた。
「なんでヒソカまで。お前もゲストじゃなかったの?」
「クックックッ!遅れて行ったら、もうお化け屋敷は開場しちゃった後でさ。一人でイクのもつまらないと思ったから、ポーに頼んで脅かし役に参加させてもらったんだけど……これ、意外と面白いものだねぇ☆」
「うん。俺もそう思う。普段は暗闇に潜んで、ターゲットの背後に回っても絶対に声なんか出しちゃいけないから、なんか爽快。ストレス発散になるって、家族全員、喜んでるよ」
「よーし☆ゴンとキルアを外に運びだしたら、イルミ。ボクと勝負しよう?」
「いいけど。なんの勝負?」
「どっちが多く、ターゲットを心臓発作で殺せるか☆」
「あ。面白そうだねー、それ」
闇の中、妖しい奇術師と妖しい殺し屋の声が、いつまでも響いていたとかいなかったとか……。