ゾル家でゾクゾク!夏祭り!!【中編】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏祭り当日。

 

 


「いやー、なんとか間に合ったね!」

 

 

 

「ギリギリもいいところだよ。全く。まさか親父が、私財投入してまではりきるとは思わなかった」

 

 

 

「でも、そのおかげですっごいのができたじゃない?」

 

 

 

快晴の青空のもと、完成したお化け屋敷……もとい、

 

 

 

“絶叫!震撼!真夏の恐怖体験!!伝説の暗殺一家ゾルディック一族に挑め~真紅に染まるククルーマウンテンの慟哭~”

 

 

 

を見上げ、私は改めてため息をついた。

 

 

 

なんだか、最初よりも更にネーミングが長くなっている気がするけど……まあ、それはさておき、とにかくスゴい。

 

 

 

なんかもう、ここ一角だけディズニー●ンドなんじゃないの?ってくらい、豪華な作りになってる!!

 

 

 

流石、ゾルディック家直々の提供と言おうか……外装も、内装もリアリティーにこだわりぬいてあるし、空調完備もバッチリだ。

 

 

 

看板に描かれている真っ赤なククルーマウンテンも迫力満点!!

 

 

 

「町中、前日からこの話題でもちきりだったもん!地元紙や地元テレビでも報道されてたし。ほら見て!まだお祭りの始まる一時間前なのに、もうお客さん達が列を作ってくれてる!」

 

 

 

「先頭の彼、昨日から並んでてくれたよね。待ち人数が予想より増えそうだから、人員整理をきちんとしないと。そのへんはゴトーに任せてあるんだっけ?」

 

 

 

「うん!あ、でも、ゴトーさんは……」

 

 

 

語尾のかわりに建物の方に視線を向けると、イルミの片眉がくいっと上がった。

 

 

 

「ああ、そう言えばそうだったね」

 

 

 

「大丈夫!チケットブースにはゼブロさんがいるし、何かあったらすぐに連絡を入れてくれるように頼んであるの。それに、なんてったって、ライン整備を任せてあるのはカナリアちゃんだもん!きちんと導引線どおり並ばないようなお客さんがいたら、あのステッキでバコーンッて--」

 

 

 

バコ---ンッッ!!!!

 

 

 

「ギャア-----ッ!!!」

 

 


うわお。

 

 

 

言ってるそばから、空に響く快音。


 

見ると、後から来たくせに先頭のお客さんを脅して割り込もうとしていた三人の男の子たちが、執事見習い制服姿のカナリアちゃんにぶっ飛ばされていた。

 

 

 

あれ……?

 

 

 

あの三人、なんか見覚えがある。

 

 

 

「行ってこよっと!」

 

 

 

「待って。俺も行く」

 

 

 

「ダメー!会場一時間前なんだから、イルミも準備しないと!ほら、いつまでも私服でいないの。はい、裏に行って着替えた着替えた!」

 

 

 

「ちぇ。わかったよ。でも、揉め事みたいだから気をつけるんだよ?」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

うなづいて、イルミに背を向けて走りだす。

 

 

 

騒ぎの現場に駆けつけてみるとーーやっぱり!

 

 

 

「あー!!どっかで見たことある感じだと思ったら、ヤモリ三兄弟!!」

 

 

 

「アモリだー!!って、お、お前は確か、ハンター試験で会った……えーっと、プー?」

 

 

 

「ポーです……」

 

 

 

「痛えよー!そんなことより痛えよにいちゃーん!!」

 

 

 

「ちっくしょおっ!なんだよこいつ、ただのバイトの整備員のくせしやがって、客に暴力ふるってただですむと思うなよ!?」

 

 

 

「そうだそうだ!警察に訴えてやる!!」

 

 

 

じ、自分達のことを棚に上げて、よくそこまで開き直れるよ全く……。

 

 

 

あ!

 

 

 

三人があんまり責め立てるもんだから、カナリアちゃんがちょっと申し訳なさそうな目で私を見つめてるじゃないの……!!

 

 

 

カワイイ!!

 

 

 

かっちりした燕尾服型の制服も、ドレッドの髪の毛がエビフライみたいなのも全部まとめてカワイイーーー!!!

 

 

 

「ポーさま……私は、この三人が忠告を無視して導引線を踏み越えようとしたので、実力で排除をと……」

 

 

 

「カナリアちゃんは全ッ然悪くないよ!悪いのはこの三人。お客様、困りますねー。頭が割れずに残ってるだけ、ありがたいと思ってくれないと。割り込み禁止。ちゃんと最後尾から並んで下さいね?」

 

 

 

「うるせー!!この暑いのにちんたら並んでられるかってんだ!!」

 

 

 

「そーだそーだ!!だいたい、なんでお前がそんなに偉そうなんだよ!?」

 

 

 

「なんでって。ここの責任者は私だからですよ。それに、お祭り期間中っていう期限付きですけど、このオバケ屋敷一帯はゾルディック家の正式な敷地です。だから、お客さんは全員、本物の侵入者としてみなされるんですよ?ゾルディックの定めたルールにまで背く侵入者なんて、ぶっ殺されたって文句言えませんーーって、全部パンフレットの説明書きに書いてあるでしょ?」

 

 

 

「「「え」」」

 

 

 

ピキン、と固まる三人。

 

 

 

そうなのだ。

 

 

 

港は公共の土地だから、あまり大規模な、好き勝手な改装ができないと知るや否や、シルバさんが私財を導入して買い取ってくれてしまったんである。

 

 

 

流石!億万長者!!!

 

 

 

かっこいー!!

 

 

 

「あと、このカワイイ女の子も、ただの整備員さんじゃないの。プロのハンター率いいる100人の賞金稼ぎをたった一人で壊滅させた、ゾルディック家専属執事見習いの、カナリアちゃんです!」

 

 

 

ピシっと背筋を伸ばしたカナリアちゃんが、冷や汗ダクダクの三兄弟に向き直る。

 

 

 

例のステッキを水平に構え--

 

 

 

「ひいいッッ!!!」

 

 

 

「て、てててことはアレか……?」

 

 

 

「こ、こ、このお化け屋敷にの中にはほほほ本物の……」

 

 

 

「はい。ようこそ、ゾルディック家提供お化け屋敷へ!命を捨てる覚悟は出来てますか?」

 

 

 

にっこり。

 

 

 

と、微笑んだ時にはすでに三人の姿は微塵もなく……。

 

 

 

「全く!逃げ足だけは早いんだから」

 

 

 

「ポーさま。お手を煩わせてしまい……大変申し訳ございません」

 

 

 

「え?そんな、カナリアちゃんが謝ることなんてないよ。ほら、お客さんも喜んでるし」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

わあっと上がる歓声。

 

 

 

思わぬ拍手喝采の嵐に、まっ赤になってるカナリアちゃん……カワイイぜー!ひゃっほーう!

 

 

 

「この辺に住んでる人たちは、海育ちだからね。喧嘩騒動もお祭りのうちだって思ってるよ。今の調子でガンガン取り締まってくれて構わないから。もう少し、侵入者……お客さんが増えてきたら、執事さんたちを何人か回すから、それまで頑張ってね!」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

笑顔一杯、元気よく一礼して、カナリアちゃんは整備に戻っていった。

 

 

 

さてさて。

 

 

 

ここはもう任せても大丈夫そうだな。

 

 

 

あとは……。

 

 

 

ピピピピピピピピ!!

 

 

 

おっと。

 

 

 

良いタイミングでかかってきたもんだ。

 

 

 

ポケットから携帯電話を取り出して、画面に表示された名前に、にんまりと笑う。

 

 

 

ピッ!

 

 

 

「はい、ポーです。二人とも久しぶり!今港についたの?……うん!じゃあ、例の建物の前で待ってるから。うん、うん、私も楽しみにしてる!」

 

 

 

……ふふふ。


 

 

さあて、メインゲスト達も無事に到着したことだし、面白くなってきぞー!

 

 

 

 

 

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