13 修行の修行!?

 

 

 

 

 

「では、纏!」



「押忍!!」



全ての念能力の基礎である『纏』。



ウィングさんの掛け声で、オーラを身体に止める。



オーラは、普通は噴き出す湯気や、燃え上がる炎のように見えるらしい。



――でも、私のオーラは。



「イルミさん……!ポーさんは、本当に念使いなんっすか?」



「そうだけど、どうして?」



「だって、さっきからずっと凝をしてるのに、ポーさんのオーラが見えないっす……!」



「そう」



「で、でも、わかるっす!とんでもない力が、とんでもない密度で壁をつくってるっす!!ガラスみたいな、水球みたいな……でも、なんで見えないっすか!?ポーさん、まさか陰を使ってるんじゃ――」



「使ってないよ。ただ、オーラの流出を食い止め、身体に止めているだけだ。でも、彼女の場合はオーラの性質そのものが異質なんだよねー。目には見えない透明なオーラ。これが、ポーの持つ最大の武器でもある」



「では、そのまま、練、凝、絶を順に三分ずつ、無理のない自然な流れで行ってみてください」



「押忍!」



オーラを止める纏。



高める練。



高めたオーラを目に集める凝。



そして、精孔を閉じ、オーラの放出を押さえる、絶。



「そこまで」



パンッ!



ウィングさんの合図で、目を開ける。


「はい、いいですよ。とくに、纏についてはオーラの量、密度、安定感。いずれにおいても非の打ち所のない、見事な念でした。ただ、私の目があなたのオーラに慣れるまで、少々時間がかかってしまいましたね。申し訳ありません」



「いえ、そんな!す、すみません見えにくくて……意識して見えるようにも出来るんですけど、それだとしんどいんですよね……」



「オーラの特性を無理に変える必要はありませんよ。あなたのオーラはまるで、自然体で陰を使っているかのように透明で、目に見えにくい。イルミさんの言うように、これは敵と対峙した際、こちらの念能力を悟らせず、また、攻撃を限りなく読ませなくするという点で、かなり優位に立てる。これも大事なあなたの個性です。変えるより、伸ばしていく方が糧になります。ですが、確かに一筋縄ではいかなさそうだ」



目尻を細め、微笑むウィングさん。



この人の笑顔って……なんだか、ゴンに似ている気がする。



そう言えば、この人もゴンと同じ強化系だっけ。



強化系って、みんなこんな風に人を安心させるように笑うのかな……。



ヒュ……ッ!



「うわあっ!?ちょ、ちょっとイルミ!修業中にいきなりエノキ投げるのやめてくれる!?」



「エノキ?ひどいなー。人の武器をキノコ呼ばわりしないでよ。それにしても、珍しくちゃんと避けれたね。なんで?」



「え……?そう言えば……なんでだろ?」



くりっ。



と、首を傾げるイルミに、



くりっ。



と、首を傾げ返す。



なんでだろ。



なんとなーく、あ、投げるだろうなーって、分かったんだけど……。



「イルミさん、ポーさん。修業中ですよ」



「「すみません」」



な、なんか私とイルミ、先生に授業中の私語注意されたみたいになってる……!



次に、テーブルの上に盆とグラス。



一杯まで水が注がれ、葉っぱが一枚浮かべられた。



おお?



これはあれだ~!!



「水見式ですね!」



「はい。次に、水見式でオーラの性質を確認してみましょう。ポーさんは、既に発の段階まで会得されていますから、自分の念の系統は既に把握しているものと思われますが――」



「お願いします!私、ハンター試験中に、必要になったものをその場その場で会得していったので、水見式も、その場にあったペットボトルと川の水を使って、即席でしか出来てないんですよね……」



「ぺ……ペットボトルと……」



「川の水……ですか。それは、確かに即席ですね」



「ポーが悪いんだよ?ちゃんと道具がそろってる場所は散々あったのに」



「だってその前に触手が出たんだもん!身を守るための泡も出来たし、オーラを触手や泡に変化させるんだから、変化系だって思うじゃない……!!」



「思わないよ。ポーはベッドの中では嘘つきだけど、普段は違うし、ヒソカみたいに気まぐれでもないだろ?」



「なんで、ベッドの中だけ嘘つきっすか?」



「それはねー」



「イルミィ―――っっ!!!」



スパ―ンッ!!



「痛いなー。やめてよ、それ」



「ズシくんの前で変なこと言わないで!!だいたいそれ、ヒソカさんが独断と偏見で勝手に作った、系統別性格判断じゃないの!当たるも八卦、外れるも八卦!!」



「それは占い。そうかなー?ヒソカはあれで戦う相手をよく観察するし、戦闘経験もあきれるほど豊富だよ?彼の系統別性格判断は、その実戦と経験をもとに分析されているから、けっこう当たるのに」



「……ちなみに、操作系のイルミは?」



「理屈屋マイペース」



当たってる……!!



「そ、それ、ほんとっすか!?感激っす!実は自分も、操作系の念能力者なんっす!!」



「そうなんだ。いいの?そんなに簡単に自分の系統バラしちゃって」



「え……そ、そりゃ、師匠からは、あまり軽々しく口に出すなと言われてるっすけど、でも、それだったらイルミさんだって」



「俺は大丈夫。邪魔になるなら殺すだけだからねー。俺、プロの殺し屋だし」



「殺し屋あ!!?」



「イルミ~。それこそ軽々しく口に出すことじゃないでしょうが……」



「なんで?」



「なんでって……」



顔写真だけで億単位の懸賞金がかかってるお尋ね者のくせに!!



「はあ……まあいいや。ウィングさん。ハンター試験中にやった水見式では、私の系統は特質系でした。反応としては、五つの系統の反応が全部出たんですけど、詳しいことは分からなかったので、改めて分析をお願いします」



「分かりました。イルミさん、ズシ。あなたたち二人は、しばらくの間、外に出ていて下さい。気が散ります」



にっこり。



おおう!!



出たあああ――っ!!



穏やかなのに有無を言わさぬ笑顔だー!!



ウィングさん、ついに怒った!



これはいわゆるアレです。



「授業の邪魔です。廊下に立ってなさい」宣告だ!



どうする、イルミ!!



「ヤだ」



「ダメです」



「ごめんね」



「ダメです」



「……」



「イ、イルミさん……あきらめた方がいいっす。師範代は一度決めたことは、絶対に変えないっす……!」



「……」



さ、流石は強化系……。



やっぱり、ゴンに通じるものがあるわあ。



ウィングさんは、イルミの放つ物騒なオーラにも怯むことなく、真正面から彼を見据えている。



静かに……でも、強力に密度と量を増していく、ウィングさんのオーラ。



ついに、チッ、とイルミは背を向けざま、無表情に舌打ちをした。



「分かったよ」



スタスタ……パタン。



おお!?



おおお~~!!



すごい、ウィングさん、すごい!!!



「では、ポーさん。水見式を始めましょうか」



「はい!」



私、やっぱりあなたに弟子入りしたこと、間違ってなかったっす!



単純一途!



強いぞ強化系!!