17 塔だ!×バトルだ!×三次試験!!

 

 

 

 

 

三次試験名物、トリックタワーの天辺にやって参りましたー。



高い。



怖い!!!



景色を見下ろしつつ、吹き上げてくる風に真っ青になっている私を押し退け、ムキムキしたお兄さんが言った。



「ようは、早く下についたもんが合格ってこったろ?俺はロッククライマーなんだ。外壁を伝って降りてやるよ!!」



「そ、そ、それ!それは怪鳥が襲ってくるからやめた方がいいですよ!」



見たくないし。



そんなグロいもの……ごはん食べたばっかりなんだからやめてほしい!



「私も得策ではないと思う。見ろ、森の上空を。私たちの匂いをかぎつけて、怪鳥が集まっている」



クラピカ、ありがとう。



ロッククライマーのおにいさん、真っ青になって震えてる。


うん。



諦めて!!



「カタカタカタ……(優しいねー、ポーは)」



「せっかくの朝ごはん、リバースしたくないですからね」



「……」



イルミことギタラクルの手が、ギギギ、と胸元に刺さったエノキに伸び、
ヒュッ!



「はっ!……やった!?まぐれとはいえ初めて避けられいたいっ!!」



スコーン!



間を置かず放たれた二発目のエノキが、私の頭にクリーンヒットした。



「カタカタカタカタ……(甘いよね。避けたあとが一番大きな隙が出来るんだよ。避けるなら、動くと同時に相手の次の攻撃を予測してなきゃね)」



「うう……いたた。しかも、なんかそれ難しすぎるよう。やっぱり、避けない方向で考えなきゃダメか……」



「カタカタカタ……(?なんの話)」



「い、いいのいいの!こっちの話。それより、ギタラクル。三次試験はもう始まってるんだよね?」



「カタカタカタカタ……(うん。僅かだけど、さっきより人数が減ってるね。恐らく、なんらかの入り口を見つけてこの塔の中に入ったんだ)」



あ、思い出した!



これってたしか、足元に隠し扉が……。



「あった!」



「カタカタカタカタ……(えっ、もう見つけたの?早いなー、えらいえらい)」



なでなで。



「……っっ!!?」



「カタカタカタ……(なに赤くなってるの。行くよ)」



「あっ、ま、待ってくださいギタラクルさん!その扉は一人しか――」



バタン!



このマイペース操作系!!



「……あっ!でもこれで、私が違う部屋に行っちゃっても、わざとだってバレないかも」



「クックック……ッ!ポーって、意外と悪いコだね☆」



どわあ!!



「ヒソカさん!そうやって毎回執拗にからんでくるのやめてくださいよ……!!」



「酷いなぁ☆ボクだって友達をキミにとられちゃって、一人ぼっちで寂しいんだよ?」



「……嘘っぽい」



「クックックックッ!!」



いいけどさ、別に。



「じゃあ、一緒に行きますか?丁度、近くに2つ隠し扉があるし、運が良ければ同じ部屋になれるかも」



「……いいのかい?」



ニンマリ。



ヒソカの目が三日月型に光ってる。でも、前みたいにやたらめったら怖い感じはしなかった。



うん、いきなりぶっ殺されることはないな。



たぶん……。



「いいですよ。これもなにかのご縁だし」



「……」



あれ。



なんだかポカーンとした顔。



ヒソカがこんな顔したのって、確か、第四次試験でゴンにプレートとられたときくらいじゃ……。



「ポー……」



ガシイ!!



「うひゃい!!?ななななんですか!?」



「ボク、本気でキミのこと気に入っちゃったかも」



「へ……?」



「お言葉に甘えさせてもらうよ☆」



ガコン!



「わっ!?」



手を引かれると同時に、地面が消えた。



落ちる、と思ったときには、すでに落下は終わっていて、暗闇の中、なんだか柔らかいものの上にポスッと収まった。



「な、なんとかなった……」



「なってないよ」



「うぎゃあ!!!」



マットが喋った……!!



ち、違う違う、イルミか。



カタカタいってないあたり、変装を解いてるんだな……なんて、ぼんやりしていたときだ。サラサラ、髪の流れる音がして、唇に、なにかがそっと触れて、離れていった。



「え……」



「……ポー、重い」



「うわっ!ご、ごめんなさい!!」



スコココーン!!!



「いたい!そして暗い!!」



当たったエノキは三本。



くそう、イルミめ!



さては隠し扉に落ちる前のもキッチリ加算したな……!!



ガコン!



天井がもう一度開いたとき、光が差してイルミの顔が少しだけ見えた。



距離……近。



「その声は、ポーだね☆」



スト。



天井はかなりの高さなのに、ヒソカはほとんど音のしない身軽さで降りてきた。



羨ましいなあ、その身体能力。



「ヒソカも来たんだ」



「うん☆ポーが誘ってくれたんだ。一人ぼっちで寂しいって言ったらさ」



「……ふーん」



「いだだだだだだっ!!イルミ!いたい!刺さってる!刺さってるから!!!」



そのとき、パッと明かりがついた。



石壁の小部屋。



丁度、漫画やアニメでゴンたちが落っこちた部屋と同じようなつくりだ。



違うのは、隅に置かれている腕輪の数。



「3つ……ってことは、このルートは三人用かな?」



「腕輪をつけると、そこのドアが開いて試験開始ってわけか☆

 ふぅん。ずいぶんとまどろっこしい真似をするね」



「指定された人数が集まらないかぎり、前には進めない……うん。それなら腕輪に罠はなさそうだね。はい、ポー」



「とか言いながら、しっかり私を実験台にしようとしてる!!」



「あ、バレたかー」



「怖いなら、ボクが先につけてあげようか?」



クスクス笑いながらヒソカ。



なんだこの優しさ……気持ち悪い。



「大丈夫です……どうせ、つけなきゃ先に進めないんだし」



「……☆」



カチ!



モニターに、1のナンバーが表示される。



続けて2、3。



すると、画面が切り替わってあのモヒカンつり目の試験官……名前、なんていったっけ?



そのひとが映し出された。



『ようこそ第三次試験会場へ。君達が選んだのは“犠牲者の路”』



げ。



なにそれ聞いてない!



多数決の道より数百倍たちの悪そうな響き……!!



やっぱりゴンたちと一緒に行けばよかったよう……おいこら聞いてるかトンパ!



お前のポジション譲れ!!



『この道を選択した者は、3つの試練の路を順にクリアしなければならない。3つの路はそれぞれ、第一の死の路、第二の針の路、第三の鍵の路だ。だが、通るものは三人のうち、一人だけでいい』



「……ええっ!?」



一番目、おもいっきり死にますって言ってますけど!!?



『一人が試練の路を行き、あとの二人は安全な路を行く。しかし、試練を受けたものがその道をクリア出来なければ、あとの二人も次の試練には進めない』



「もし失敗したら?」



『試練を受けるものがなんらかの場合で再起不能となった場合……つまり、死亡した場合、残る二人のうちどちらかが戻って、その試練を受けなおす。試練をクリアしたら、次の試練の路にすすみ、また、試練を受ける一人を決めて進む。その繰り返しだ。誰が試練を受けるか……誰が犠牲者になるかは、全て君達の決定に任せる。では諸君。健闘を祈る』



ズズズズ……!!



モニターが天井に収納され、壁に真っ直ぐ亀裂が入った。


重々しい音をたてて開いたその先の部屋には、際奥に2つの扉。


左右の壁には古今東西、ありとあらゆる武器や拷問器具、拘束具が、いらっしゃいませご主人様とばかりにズラズラと並んでいて……ダメだ、お母さんお父さん。



私、死んだ……。