7 スケボー!×奪還!×中間ポイント!!

 

 

 

 

 

「「ゴオ―――ルッ!!!!」」

 



「やりい!俺の勝ちっ!!」

 

 


「えー!俺のほうが絶対速かったもんね!」

 

 


わいわいぎゃあぎゃあ。

 

 


かれこれ五時間近く走り通した直後だっていうのに、あいかわらずゴンとキルアは元気いっぱいだ。

 

 


でも、視線に気づいてチラッとこっちを見た瞬間、ビキッっと凍りついた。

 

 


「やあ☆」

 

 


「ポー!!!!よりにもよって、なんでそんなヤバイ奴に捕まってるんだよ!!」

 

 


「ヒソカ!!今すぐポーを放せ!!」

 

 


「この変態野郎!!」

 

 


「そうだぞヘンタイ!ヒソカのヘンタイ!……ところでキルア、ヘンタイってなに?」

 

 


「……★」

 

 


あ。

 

 


今、ヒソカがちょっと傷ついた。

 

 

 

気がした。

 

 

 

「酷いなあ★ボクはただ、頑張ったポーへのご褒美に、ゴールまで連れていってあげただけなのに」

 

 


「ご褒美?」

 

 


「そ。はい、ポー。約束通り、これはキミのモノだ☆」

 

 


ストッと下ろされ、スケートボードを手渡される。

 

 


私は、それをキョトンとした顔のキルアに差し出した。

 

 

 

「キルア、ごめん!大切なボードを貸してくれたのに、途中でヒソカさんに捕られちゃってた!」

 

 


「うええっ!?つまり、ポーはそれを取り返したってのかよ!」

 

 


「うん」

 

 


「どうやって……!?」

 

 

 

「追いかけっこして捕まえたんだよ」

 

 


「ま、どっちかっていうと待ち伏せされたんだケドね☆」

 


でも、合格。

 

 


妖しい奇術師はにっこり笑んで、ポンポン、と私の頭をいいこいいこした。

 

 

 

う………嬉しくなんかないもんね!

 

 


「じゃ、ボクは行くよ☆これ以上キミたちの近くにいると、お仲間の視線にゾクゾクしてきちゃいそうだからね☆」




あ、レオリオとクラピカだ。

 

 


青い顔をしながらも、ヒソカを睨んでくれている。

 

 


くるりと背中を向けた奇術師に、私は言った。

 

 


「ヒソカさん!!」

 

 


「?」

 

 


「今度は待ち伏せじゃなく、ちゃんと捕まえてみせますからね!!」

 


「……クスッ、楽しみにしてるヨ☆」

 



はー、怖かった。

 

 

 

色々あったけど、私にも念が使えるんだってことがわかっただけでも大収穫!

 

 


たしか、ストーリー的にはここはたしか中間ポイントで、これからヌメール湿原って

いう詐欺師の沼を通るはずだ。

 

 


棲んでる生き物がみんな嘘つきで、騙されると食べられるっていう怖い場所だけど、オーラの流出を纏で押さえながら走れば、なんとかクリア出来るかもしれない!

 

 


うおおお!

 

 


なんか燃えてきたっ!

 

 


らしくもなく拳なんか握りしめていたら、隣にいたキルアがくいっと袖を引いてきた。

 

 


「ん?」

 

 

 

「ポー……なんでそんな無茶したんだ」

 

 

 

「無茶?」

 

 


「相手はヒソカだぜ?スタート地点で気に入らないやつの両腕切り落としてたの、知ってるだろ。いくらボードを取り返すためだって言ってもさ、向こうの気がいつ変わるかなんてわかんないじゃん。ポー、殺されてたかもよ」

 

 


「大丈夫!ヒソカさんは基本的に、頑張ってるひとには手を出さないから」

 

 


「な……!なんでそんなことが分かるんだよ!」

 

 


「勘かなぁ……でも、自分を過大評価してたり、慢心してたり、ヒソカさんに対して敵意や悪意を抱いてるひと以外には、なにもしてないじゃない」

 

 


「今のところは、だろ!」

 

 


「ううん。ヒソカさんは、自分の目に留まったひとの成長に対しては、見守る傾向にあると思う。逆に、私がなにもしないで最初から諦めてたら、なにかされてたかも」

 

 


「……」

 

 


「というのはタテマエで――」

 

 


ガシッ!

 

 


「むぎゅっ!」

 

 


「あのねぇ、あのボードは、キルア君が私のことを信用して預けてくれたんでしょうが!友達の大切にしてるものを奪われて、ほっとけるわけないでしょ!!」

 

 


「……!」

 

 


「ポー……うん!そうだよね!ポーはキルアの友達だもんね!!」

 

 


「友達……」

 

 


うつむいたキルアのホッペタが赤い。
 

 

 

 

かっわい――!!!

 

 

 

いやあ、流石は殺し屋さんだね。

 

 


おねーさん、色んな意味でイチコロですよ!!

 

 

 

 

 

 

 


       ***


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 


「おや、どうしたの?」

 

 


「……カタカタカタ(……厄介だな)」

 

 


「ポーのことかい?ダメダメ、殺しちゃ☆ボク、彼女のこと結構気に入っちゃっただから★」

 

 


「……カタカタカタカタ(はいはい。わかってるよ)」

 

 

 

 

 

 



       ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でいい」

 

 


「え?」

 

 


「キルアでいい。俺も、ポーって呼んでるからさ」

 

 


「うん。ありがとう、キルア」

 

 


「……!」

 

 


にっこり笑ってお礼を言うと、キルアは耳まで真っ赤になって、それをすかさずゴンがからかった。

 

 


きゃあきゃあとはしゃぐ私たち。

 

 

 

その周りの空気が、一瞬にして冷たく張りつめたものになる。

 

 

 

「そいつは試験官じゃない!偽物だっ!本物の試験官は俺だ!!」

 

 

 

ああー、はいはいはい。

 

 

 

あったあった、こんなプチイベントあったわー。

 

 

 

猿の死体を担いで怒鳴る男。
 

 

 

 

偽物と言われても、悠然と構えるサトツさん。

 

 


サトツさん……じつは、密かに好きなキャラクターなんです。

 

 

 

大人の男性って素敵。

 

 

 

考古学がお仕事なんてなおさら素敵。

 

 

 

じーっと見ていたら、視線が気になったのか、サトツさんはちょっと眠そうな、半分だけ開いたような目を私に向けた。

 

 

 

「あなたも、そう思いますか?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「あなたも、私が偽物だと思いますか?」

 

 


「思いません、思いません」

 

 


「それは何故ですか?」

 

 

 

「野生の動物は、しないことをしてるからですよ。さっすが、プロのハンターですよね!あんなに走った後なのに、ほとんど自然体と変わらないんだから……」

 

 

 

ほう、と言うように、サトツさんの口ひげが動いた。

 

 

 

「え、なになに?なんのこと?」

 

 

 

「野生の動物がしないこと……?」

 

 

 

その時だ。

 

 

 

ヒュ……ッ!

 

 

 

と、空気を裂く音がして、なにかが顔の横を掠めていった。

 

 

 

瞬きひとつ、私の前には、両手で数枚のトランプを受け止めたサトツさんが。

 

 

 

おお~っ!!!

 

 


「カッコいい!!」

 

 


ゴンやキルアと一緒になって、思わず歓声を上げると、サトツさんは確かにこちらを見てフフッと笑った。

 

 


試験終了日、ゴンにしか見せてくれないと思っていたあの幻の笑顔が目の前に……!!!

 

 


「なるほど……あなたが本物の試験官か☆ハンター試験の試験官は、プロのハンターが無償で引き受けるものだからねぇ。ボクらが目指しているハンターが、この程度の攻撃をかわせないわけはない☆ポー、大正解☆☆」

 

 

 

「う、嬉しくない!」

 

 


クックック……ッ。

 

 


喉の奥で笑うヒソカを、一変して厳しい表情で見据えるサトツさん。

 

 


「今回は見逃しますが、次からはいかなる理由があろうとも、私への攻撃を行った場合、失格となりますよ」

 

 


カッコいい……!!

 

 


なんか生徒指導の先生に思えてきた!

 

 


先生!

 

 

 

さっきあのヒソカってひと、私から大事なスケボー取り上げて虐めました!!

 

 

 

「では、出発します。ここを抜けた先に、第二次試験会場があります。そこがゴールです」

 

 

 

くるり、と背を向けて、またまたさっさと歩き出すサトツさん。

 

 


そうだ……いいこと考えた!

 

 


第二次試験会場につくまでに、なんとしても覚えておきたいことがあるんだ!