35 イルミ!×ポー!×それぞれの道!!

 

 

 

 

 

「……で、よかったの?これで



晩餐会を抜け出してバルコニーに出ると、待ち構えていたようにそこにいた男に捕まった。


失敗した、と後悔しても遅い。



「よかったもなにも、ポーは幻獣ハンターになるって言ってるし。俺には仕事があるし。それともなに、ヒソカは俺にポーを拐って無理矢理にでも殺し屋に仕込めっていうの?それ、いくらなんでも酷くない……?」



「……ボク、ポーじゃなくてキミの大事な弟君の話がしたかったんだけどな



「……」



「……



「………………………ヒソカ」



「なに?」



「殺していい?」



「ダメだよイルミとはいつかまた本気で闘いたいけど、照れ隠しに殺されたくはないな



「照れてなんかいないよ」



でも、目の前のムカつくピエロのニヤニヤ顔は深まるばかりだ。



「じゃあ、いいよ。ポーの話をしようか?イルミはこのままポーと離れ離れになってもいいんだね……?



「仕方ないじゃない。生きる世界が違いすぎる」



「ふぅん、でも」



ピッと突き出されたトランプはハートの10。



「向こうはそう思ってないみたいだよ



「……!!!??」



直後、なにかが俺の身体中に巻きついた。










       ***












「イルミゲット!!!!!!」



庭に潜んでたかいがあった!!



パーティーが嫌になってバルコニーに出てきたら、捕まえようと思ってたんだから!



触手を引き寄せてみると……うわあ、嫌そうな顔。



「イルミ……活きが悪いよ」



「なんの用?」



「……どうすればいいの?」



「は?」



「イルミの友達になるには、どうすればいい!?私ね、ゴンたちと一緒にイルミの家に行こうと思ってるんだけど、それでいい??」



いいわけない。



そんな顔されるのは分かってるよ。



分かってたよ……でも嫌だ。



このまま、会えなくなるのは嫌だ……。



「ポー、放してよ」



「ヤだ!放したらイルミ、逃げるもん!!」



「……逃げないよ。逃げても追いかけて来るんだろ?」



「うん」



ほらみろ、と言われて、でも放したくない……。



「ていうか、捕まえるならせめてポーの腕で捕まえてよ。触手じゃなくてさ」



「え!?あ、そっか、ごめん……」



す巻きにしていた触手をはずして、かわりにぎゅっと抱きついた。



恥ずかしいけど逃がすよりマシ!!



「俺、ポーのこと友達だなんて思ってないよ」



「……わかってる」



「友達になりたいとも思わないし」



「……わ、わかってるよ!傷つくから何回も言わないで……!」



メソメソ泣いている私に、イルミはしばらくなんにも言わなかった。



やがて、くりっと頚をかしげ、



「ポーは、まだ俺のことが好きなの?」



「……」



こくん、と頷く。



そうなのだ。



なにをどう間違ったのかは知らない。



間違ったのかどうなのかもわからないけど、私。



「イルミが好き……だから、試験が終わっても傍にいたい」



「……」



「ヤダって言うならこのまま食べてやる……!!!明日を生きる私の栄養分にしてやる……!!」



「怖いなあ」



ひし!



と抱きつく私の頭を、イルミはいつかしてくれたようにポンポンと撫でた。



そして――

 

 

 

「ねぇ、やっぱりしてくれる?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「キス。俺に黙って危ないことした分」

 

 

 

「わかった」

 

 

 

頷いて、あごを上げ、イルミを見た。

 

 

 

両腕を伸ばし、肩から、首の後ろへと沿うように手のひらを滑らせる。

 

 

 

すると、それに合わせて、イルミはゆっくりと長身をかがめてきた。

 

 

 

唇が降りてくる。

 

 

 

「……んっ」

 

 

 

「……」

 

 

 

長いキスだった。

 

 

 

初めは触れるだけの、それからお互いの出方を探るように、唇を割る。

 

 

 

吐息や、舌先から伝わってくるイルミの体温。

 

 

 

ぴったりと密着した胸から、弾け出してしまいそうなほどの、心臓の音。

 

 

 

私たちは何度も舌を絡ませたあと、どちらともなく唇を離した。

 

 

 

最後のキスだった。

 

 

 

自覚した瞬間、涙が溢れ出した。

 

 

 

俺、と、イルミがぽつりと言う。

 

 

 

「俺……友達はいらないけど――としてならポーが欲しいな」



「……え」



「それでもいいなら、家においで」



あ、でも俺、仕事があるからすぐには無理だよ。



長丁場でさ、はやくても半年くらいかかりそうだけどその後でもいい?



そんな――ことを言われた気がする。



でも、そんなの頭に入ってなかった……。



だって、そのときの私は頷くのが精一杯でっ!

 

 

 

そのあとどうやってホテルの部屋に行って、寝たのか、全然覚えていないんだよ!!!!

 

 

 

うおおおおおっ!!!

 

 

 

イ、イルミのバカあああああああああああああああ----っっ!!!